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電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について


改正履歴
基安労発第0726001号
平成14年7月26日
都道府県労働局労働基準部
       労働衛生主務課長 殿
厚生労働省労働基準局
安全衛生部労働衛生課長

電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について

「電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令」(平成14年厚生労働省令第97号。以下「改正省令」という。)については、平成14年7月26日に公布され、同日より施行されたことに伴い、その改正の趣旨に関しては、平成14年7月26日付け基発第0726001号「電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について」により通達されたところである。
ついては、改正省令による電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41号。以下「電離則」という。)の改正部分等の詳細等を下記に示すので、その適切な運用に遺漏なきを期されたい。



第1 改正事項の詳細
1 電離則第12条第2項及び第13条第2項関係
(1) エックス線照射野と受像面の関係について
電離則第12条第1項及び第13条第1項第3号は、特定エックス線装置(以下「エックス線装置」という。)の使用に際してのエックス線照射野と受像面との関係について、受像面で有効に使用されることのないエックス線照射野が存在することによる労働者の被ばく増加を防止する意味から定められているものであり、改正省令施行前については別添表1に示すとおりであったものを、改正省令により別添表2に示すものに改め、誤差の許容範囲を明確にしたものであること。
通常のエックス線装置のエックス線照射器側と受像器側との位置関係は調整可能となっており、撮影や透視の対象となる被照射体に合わせたエックス線管焦点受像器間距離を設定するものであるが、そのエックス線管焦点受像器間距離(条文中の「利用するエックス線管焦点受像器間距離」とされているもの。)に合わせてエックス線照射野を受像面に一致させるよう調整する必要があるが、この際、エックス線照射野を受像面に一致させるようエックス線装置の調整を行っても、実際は、調整装置等の機械の精度により、エックス線管焦点受像器間距離が長いほどエックス線照射野を受像面に完全に一致させた状態とすることが困難となり誤差が生じるものであることから、その誤差の許容される範囲を明確にしたものであること。
国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission。以下「IEC」という。)では、この誤差の範囲についての具体的な基準を定めており、電離則においても、この誤差をIECの定めるところとしたものであること。
なお、IECとは、電気及び電子技術分野の国際規格の統一と協調を促進するため、明治41年(1908年)に設立された国際標準機関であり、電気・電子機器等に関する規格(IEC規格)を策定し、各国の規格についてもこれに準拠するよう勧告を行っており、我が国では、昭和28年(1953年)にIECに加盟している。
(2) 誤差の許容の適用を医療用のエックス線装置に限ったことについて
医療目的で間接撮影及び透視を行う場合には、工業用での使用の場合と異なり、被照射体である患者の被ばくも考慮し、患者の被ばくを増加させないため、照射回数及び照射時間を増やさないことが必要であることから、エックス線装置の受像面を最も有効に使えるよう、エックス線照射野が受像面と一致する状態までエックス線装置を調整して使用することとなるが、このとき、上記(1)のとおりエックス線照射野と受像面を一致させるように所要の調整を行っても、実際には、エックス線照射野が受像面を超える場合があること。
エックス線装置を医療用以外(工業用等)の間接撮影や透視に使用する場合については、一般的には被照射体の被ばくを考慮する必要はないことから、エックス線照射野が受像面を超えないように所要の調整を行う際、絞りや照射筒により十分に照射野を狭めることで、撮影回数や透視に要する時間が増加しても、電離則第12条第1項及び第13条第1項に規定される改正部分以外の各号の規定が適切に措置されている限りは作業従事者の被ばく防止が図れるため、医療用と同様にエックス線照射野が受像面を超えることを許容するものではないこと。
(3) 条文の整理について
改正前において第12条第1項及び第13条第1項第3号の条文中に括弧書きされていた「受像面が円形であって、かつ、エックス線照射野が矩形である場合」に関する規定を、医療用エックス線装置のエックス線照射野と受像面の関係に一定の誤差を許容する旨の規定を追加したことから、併せて、それぞれを第2項で規定するものとしたものであること。
2 電離則第13条第1項第5号関係
本条は、受像器等で遮へいできない利用線錐からはみ出している散乱エックスによる被ばくを防止する趣旨で規定されているものであり、受像面上においてエックス線照射野が最大となるようにしたとき、そのエックス線照射野の周囲3pの部分までを通過するエックス線について、一定線量率以下とするよう規定されているものであること。
従って、改正前の規定中の「最大照射野」について、その意味するところが「受像面における最大のエックス線照射野」であることから、より表現として適切な用語となるように「最大受像面」としたものであること。

第2 「医療用のエックス線装置」の定義について
電離則に規定する「医療用のエックス線装置」とは、医師、歯科医師、診療放射線技師若又は診療エックス線技師の管理下において医療目的で使用されるものであること。
従って、薬事法に基づく医療用エックス線装置基準に準拠しているエックス線装置であっても、その使用目的が電子部品の検査等の医療以外である場合には、当該エックス線装置は電離則第12条第1項第2項でいうところの医療用以外(工業用等)のエックス線装置となるものであること。

第3 その他について
1 医療法施行規則等との関係について
医療用のエックス線装置の使用に関しては、医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号。以下「医療則」という。)等の適用も受けるため、従前より電離則は医療則等との整合性を図ってきたところである。
医療則等においては、今回の電離則の改正と同趣旨の改正を平成14年3月27日に行っているところであること。
2 透視時の散乱エックス線の防護措置について(電離則第13条第1項第6号関係)
エックス線装置を用いて透視を行う際には、電離則第13条第1項第3項に規定されるとおり、エックス線利用線錐が受像面を超えないように適正に管理することとなるが、これに加えて、被照射体からの散乱エックス線からの被ばくの防護措置が必要であること。
そのため、電離則第13条第1項第6号では「被照射体の周囲には、利用線錐以外のエックス線を有効に遮へいするための適当な設備を備えること。」と規定しているところであるが、この「適当な設備」とは、防護衝立、防護カーテン、防護衣等であること。
医療の透視の場合は、医師等が被照射体である患者の側に立ち、直接に患部に手を近づける等して施術する場合もあり、その場合には設置した防護衝立等を部分的に外さざるを得ない状況も生じるため、利用線錐以外のエックス線を遮へいするための措置としては防護衣等の個人用保護具の使用が中心となることから、作業計画の策定や保護衣の管理等について特に留意する必要があること。