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労働安全衛生法等の一部を改正する法律(労働安全衛生法関係)等の施行について
T  労働安全衛生法関係

労働安全衛生法等の一部を改正する法律(労働安全衛生法関係)等の施行について 目次

T 労働安全衛生法関係
 1 危険性又は有害性等の調査等(第28条の2関係)
 (1) 危険性又は有害性等の調査等の実施
     近年、生産工程の多様化、複雑化が進展するとともに、新たな機械設備・化学物質が導入され
    ており、事業場内の危険・有害要因が多様化し、その把握が困難になっている状況にかんがみ、
    事業者は、建設物、設備、作業等の危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて必要な措
    置を講ずるように努めなければならないこととしたものであること。
 (2) 指針の公表
    (1)の措置の適切かつ有効な実施のため、厚生労働大臣が指針を公表することとしたものであ
   ること。
 (3) その他
    今回の改正に併せて、改正法による改正前の労働安全衛生法(以下「旧法」という。)第58条
   は削除したこと。
 2 製造業等の元方事業者等の講ずべき措置(第30条の2関係)
 (1) 第1項の「一の場所」の範囲
    「一の場所」の範囲については、昭和47年9月18日付け基発第602号Iの7の(2)と同様である
   こと。
    なお、これを化学工業関係、鉄鋼業関係、自動車製造業関係について例示すれば、次のように
   考えられること。
化学工業関係
製造施設作業場の全域
用役(ユーティリティ)施設作業場の全域
入出荷施設作業場の全域
かっこ 又は化学工業事業場の全域
鉄鋼業関係
製鉄作業場の全域
熱延作業場の全域
冷延作業場 の全域
かっこ 又は製鉄所の全域
自動車製造業関係
プレス・溶接作業場の全域
塗装作業場の全域
組立作業場の全域
かっこ 又は自動車製造事業場の全域
 (2) 第1項の「その他政令で定める業種」は、定められていないこと。
 (3) 第1項の「作業間の連絡及び調整」とは、混在作業による労働災害を防止するために、次に掲げ
    る一連の事項の実施等により行うものであること。
   [1] 各関係請負人が行う作業についての段取りの把握
   [2] 混在作業による労働災害を防止するための段取りの調整
   [3] [2]の調整を行った後における当該段取りの各関係請負人への指示
 (4) 第2項及び第4項の規定は、第30条第2項及び第4項と同様、いわゆる分割発注等の場合にみられ
   るように、同一の場所において相関連して行われる一の仕事が二以上の請負人に分割して発注さ
   れ、かつ、発注者自身は当該仕事を自ら行わない場合について規定したものであること。 
 (5) 第3項の規定により労働基準監督署長が指名を行う場合は、昭和47年9月18日付け基発第602号
   の別紙様式第2号と同様の様式により行うこと。この場合において指名の対象となる事業者は原
   則として安衛則第643条の7において準用する第643条第1項各号のいずれかに該当する者のうちか
   ら選定すること。
 3 化学物質等を製造し、又は取り扱う設備の改造等の仕事の注文者の講ずべき措置(第31条の2関係)
   近年、業務の外注化が進展する中、爆発等のおそれがある危険有害な化学物質の製造設備などの
  改造、修理、清掃等の作業の外注が頻繁に行われ、これらの作業を行う外部の建設業者等が、当該
  設備の中の化学物質の危険性・有害性や、取扱上の注意事項等の情報を十分に知らないまま作業を
  行っていたこと等による労働災害が発生している。
    このため、一定の危険有害な化学物質を製造し、又は取り扱う設備の改造等の作業を注文する者
  に対して、当該作業において注意すべき事項等の情報を請負人に提供する義務を課すとともに、注
  文者から情報提供を受けた請負人は、その関係する情報を下請負人に通知する義務を課すこととし
  たこと。
 4 化学物質等に係る表示及び文書交付制度の改善(第57条及び第57条の2関係)
   化学物質を取り扱う作業において、その物質の危険性や有害性を知らずに行っていたことによる
  爆発、火災、中毒等の災害が発生しており、事業者による適正な化学物質の管理を促進することが
  必要である。
   国際的には、平成15年に、人の健康確保の強化等を目的に、化学物質の危険有害性を、引火性、
  発がん性等の約30項目に分類した上で、危険有害性の程度等に応じてどくろ、炎等の標章を付すこ
  と、取扱上の注意事項等を記載した文書(化学物質等安全データシート(MSDS))を作成・交付す
  ること等を内容とする「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)」が、国際連合か
  ら勧告として公表されたところである。
    これらを踏まえ、法に基づく容器等への表示・MSDSの交付について、現在対象としている有害性
  のみならず、危険性をも対象とするとともに、その表示内容等についても標章を導入するなど、前
  記勧告と整合するよう改正を行ったものであること。
   なお、第57条各号及び第57条の2各号関係については、別途示すところによること。
 5 健康診断実施後の措置等(第66条の5関係)
    長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策やメンタルヘルス対策等の
   労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進を図るための対策については、衛生委員会等(衛生委
   員会及び安全衛生委員会をいう。以下同じ。)において必要に応じて労働者の健康の状況を掌握し、
   これを踏まえて調査審議することが有効と考えられることから、健康診断実施後の措置の例として、
   医師等の意見の衛生委員会等への報告を追加したこと。
    また、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)第7条の労働時間等設
   定改善委員会は、労働時間等の設定の改善を図るための措置その他労働時間等の設定の改善に関す
   る事項を調査審議し、事業主に対し意見を述べることを目的とする委員会であり、同委員会に対し
   て健康診断結果に基づく医師の意見を報告することは、労働者の健康に配慮した労働時間等の設定
   の改善に有効と考えられることから、健康診断実施後の措置の例として、医師等の意見の労働時間
   等設定改善委員会への報告を追加したこと。
    なお、衛生委員会等又は労働時間等設定改善委員会への医師等の意見の報告に当たっては、医師
   等からの意見は個人が特定できないように集約・加工するなど労働者のプライバシーに適正な配慮
   を行うことが必要であること。
 6 特殊健康診断の結果の通知(第66条の6関係)
 (1) 従来から健康診断結果の通知が義務付けられている定期健康診断等に加えて、特殊健康診断等
   についてもその結果の通知を義務づけたこと。
 (2) 通知は、総合判定結果だけではなく、各健康診断の項目ごとの結果も通知する必要があること。
 (3) 通知の方法としては、健康診断を実施した医師、健康診断機関等から報告された個人用の結果
   報告書を各労働者に配布する方法、健康診断個人票のうち必要な部分の写しを各労働者に示す方
   法等があること。
 (4) 今回の改正により新たに通知の対象となる健康診断は、法の施行の日(以下「施行日」という。)
   以降に行われたものであること。
 (5) 通知した旨の事実は、記録しておくことが望ましいこと。
 7 面接指導等(第66条の8第66条の9等関係)
 (1) 面接指導(第66条の8関係)
   ア 第1項関係
   (ア)脳血管疾患及び虚血性心疾患等(以下「脳・心臓疾患」という。)の発症が長時間労働と
     の関連性が強いとする医学的知見を踏まえ、これら疾病の発症を予防するため、医師による
     面接指導を実施すべきこととしたものであること。また、労災認定された自殺事案をみると
     長時間労働であった者が多いことから、面接指導の実施の際には、うつ病等のストレスが関
     係する精神疾患等の発症を予防するためにメンタルヘルス面にも配慮すること。
   (イ)面接指導を実施する医師としては、産業医、産業医の要件を備えた医師等労働者の健康管
     理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師が望ましいこと。
   (ウ)面接指導の費用については、法で事業者に面接指導の実施の義務を課している以上、当然、
     事業者が負担すべきものであること。
   (エ)面接指導を受けるのに要した時間に係る賃金の支払いについては、当然には事業者の負担
     すべきものではなく、労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業
     の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、面接指導を受けるのに要した時間の賃
     金を事業者が支払うことが望ましいこと。
   (オ)派遣労働者に対する面接指導については、派遣元事業主に実施義務が課せられるものであ
     ること。なお、派遣労働者の労働時間については、実際の派遣就業した日ごとの始業し、及
     び終業した時刻並びに休憩した時間について、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣
     労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」とい
     う。)第42条第3項に基づき派遣先が派遣元事業主に通知することとなっており、面接指導が
     適正に行われるためには派遣先及び派遣元の連携が不可欠であること。
   イ 第4項関係
   (ア)医師の意見聴取については、面接指導を実施した医師から、面接指導の結果報告に併せて
     意見を聴取することが適当であること。なお、地域産業保健センターの医師により面接指導
     を実施した場合は、事業者は当該医師から意見を聴取すること。
   (イ)面接指導を実施した医師が、当該面接指導を受けた労働者の所属する事業場で選任されて
     いる産業医でない場合には、面接指導を実施した医師からの意見聴取と併せて、当該事業場
     で選任されている産業医の意見を聴取することも考えられること。
   ウ 第5項関係
   (ア)面接指導実施後の措置の例として、医師の意見の衛生委員会等又は労働時間等設定改善委
     員会への報告を規定した趣旨は、Iの5と同様であること。
      また、衛生委員会等又は労働時間等設定改善委員会への医師の意見の報告に当たっては、
     医師からの意見は個人が特定できないように集約・加工するなど労働者のプライバシーに適
     正な配慮を行うことが必要であること。
   (イ)特にメンタルヘルス不調に関し、面接指導を受けた結果として、事業者が労働者に対して
     不利益な取扱いをすることがあってはならないこと。
   (ウ)事業者は、面接指導により労働者のメンタルヘルス不調を把握した場合は、必要に応じ精
     神科医等と連携を図りつつ対応することが適当であること。
 (2) 必要な措置(第66条の9関係)
    面接指導の対象となる労働者以外の労働者であっても、脳・心臓疾患の発症の予防的な意味を
   含め、健康への配慮が必要なものに対して、第66条の8第1項から第5項までの措置に準じた必要
   な措置を講ずるよう事業者に努力義務を課すものであること。
 (3) 小規模事業場における面接指導等(改正法附則第2条関係)
    常時50人以上の労働者を使用する事業場以外の事業場については、平成20年3月31日までの間
   は、法第66条の8及び法第66条の9の適用はないこと。
    しかしながら、平成20年3月31日までの間、これらの事業場についても、長時間労働による健
   康障害を防止するため、地域産業保健センターを活用すること等により面接指導等を実施すると
   ともに、その結果に基づく措置を講ずることが適当であること。
 8 計画の届出の免除(第88条関係)
   第28条の2第1項に規定する措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、労
  働基準監督署長が認定した事業者については、労働基準監督署における計画届の事前審査を代替す
  ることができるため、第88条第1項及び第2項に基づく計画の届出(以下「計画の届出」という。)
  の義務が免除されることとしたものであること。
 9 健康診断等に関する秘密の保持(第104条関係)
 (1) 面接指導制度が新たに設けられたことから、面接指導の実施に従事した者の秘密保持義務を定
   めたものであること。
 (2) 面接指導に関する実務を行うに当たっては、労働者の健康情報は、平成16年10月29日付け基発
   第1029009号「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項につ
   いて」(以下「健康情報留意事項通達」という。)に基づき、特に適正な取扱いが確保されるべ
   きものであることに留意すること。
 10 教習及び技能講習制度の見直し(別表第17から第22まで、改正法附則第3条関係)
 (1) デリック運転実技教習は廃止されたこと。
 (2) 地山の掘削作業主任者技能講習と土止め支保工作業主任者技能講習については、作業の関連性
    が高いことから、これらを統合し、地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習が新設され
    たこと。
     なお、別表第20の技能講習における科目ごとの講師の条件の欄の「同等以上の知識経験を有す
    る者」については、平成16年3月19日付け基発第0319009号「公益法人に係る改革を推進するた
    めの厚生労働省関係法律の整備に関する法律の施行並びにこれに伴う関係政令、省令及び告示の
    改正等について」別添6において示しているが、当該通達についてもVIIIのとおり改正を行った
    こと。
 (3) 石綿作業主任者については、特定化学物質等作業主任者技能講習を修了した者から選任するこ
    ととされていたところであるが、今後の石綿による健康障害予防対策は、建築物の解体等の作業
    が中心となることから、技能講習について石綿に係る講習を新たに設けることとしたものである
    こと。
    一方、特定化学物質等作業主任者技能講習と四アルキル鉛等作業主任者技能講習については、
   講習内容が類似する部分が多いことから、これらを統合することとしたものであること。
    なお、別表第20の技能講習における科目ごとの講師の条件の欄の「同等以上の知識経験を有す
   る者」については、平成16年3月19日付け基発第0319009号「公益法人に係る改革を推進するた
   めの厚生労働省関係法律の整備に関する法律の施行並びにこれに伴う関係政令、省令及び告示の
   改正等について」別添6において示しているが、当該通達についても[のとおり改正を行ったこ
   と。
 (4) 施行日において現に旧法に基づく教習又は技能講習を受講しており、かつ、修了していない者
    に係る教習又は技能講習については、なお従前の例によるものであること。
 11 その他
   改正法により第30条の2及び第31条の2が新設されたことに伴い、現行の第30条の2が第30条の3に、
  第31条の2が第31条の3に、第31条の3が第31条の4に、それぞれ条ずれしていること。