平成30年北海道胆振東部地震の復旧工事における労働災害防止対策の徹底について

基安安発0914第2号
基安労発0914第1号
基安化発0914第1号
平成30年9月14日
北海道労働局労働基準部長 殿
厚生労働省労働基準局安全衛生部
安全課長
労働衛生課長
化学物質対策課長

平成30年北海道胆振東部地震の復旧工事における労働災害防止対策の徹底について

 本年9月6日に北海道胆振地方中東部で発生した地震により、北海道内を中心に建築物、交通インフラ、
水道等に大きな被害が発生しているところである。
 今後、がれきの処理や建築物の改修工事、道路、水道等のインフラ復旧工事等に係る様々な作業が早急
に行われることが見込まれるが、暫くの間は余震の発生や降雨による二次災害のおそれにも十分留意しつ
つ、労働災害防止の徹底を図る必要がある。
 ついては、管内の実情に応じ、発注機関との連携を図りつつ、下記の事項を踏まえた災害復旧工事にお
ける労働災害防止対策の徹底について、関係団体に周知するとともに、災害復旧工事現場に対する指導を
徹底されたい。
 なお、建設業関係団体等に対し、別添のとおり、災害復旧工事における労働災害防止対策の徹底につい
て要請したので了知されたい。
1 土砂崩壊災害防止対策
 (1) 地山の掘削を伴う工事の施工に当たっては、地震や降雨の影響により地山に緩みが生じている可能
  性があることに十分に留意の上、労働安全衛生規則(以下「安衛則」という。)第355条に基づき、作
  業箇所及びその周辺の地山について、形状、地質及び地層の状態、含水及び湧水の状態等をあらかじ
  め十分に調査すること。
   また、今回の地震以前から着工している工事についても、必要に応じ、改めて同様の調査を行うこ
  と。
 (2) 上記(1)の調査結果を踏まえ、作業計画を定め、又は作業計画を変更し、これに基づき作業を行う
  こと。
 (3) 掘削の作業に当たっては、安衛則第358条に基づき点検者を指名し、作業箇所及びその周辺の地山
  について、通常の場合よりも頻度を高めて点検を行うことにより、地山の異常をできるだけ早期に発
  見するよう努めること。また、必要に応じ、地山の状況を監視する者を配置すること。
 (4) 土砂崩壊のおそれがある場合には、安衛則第361条に基づき、あらかじめ、堅固な構造の土止め支
  保工を設ける等土砂崩壊による災害を防止するための措置を講ずること。また、土止め支保工を設け
  る等の作業中における災害の防止にも留意すること。
 (5) 平成27年6月29日付け基安安発0629第1号別添1「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガ
  イドライン」に基づき、日常点検、変状時の点検を確実に行うこと。また、斜面の変状の進行を確認
  した場合は、施工者、発注者等は、安全性検討関係者会議において斜面の状況に対応するためのハー
  ド対策等の労働災害防止のための措置を検討すること。
 (6) 復旧工事のうち、地山の掘削を伴わない工事についても、斜面の近傍で工事を実施する場合には、
  上記(1)から(5)までに準じ、事前調査及び点検、土砂崩壊のおそれがある場合における措置の徹底を
  図ること。

2 土石流災害防止対策
 (1) 土石流危険河川における工事の施工に当たっては、安衛則第575条の9に基づき、作業場所から上流
  の河川の形状、その周辺における崩壊地の状況等をあらかじめ十分に調査すること。また、今回の地
  震前から着工している工事についても、必要に応じ、改めて同様の調査を行うこと。
 (2) 土石流の早期把握等の措置を講ずるための警戒降雨量基準、作業を中止して労働者を退避させるた
  めの作業中止降雨量基準等を、必要に応じ見直すこと。また、降雨量が警戒降雨量基準に達していな
  くても、危険が予想される場合には、作業場所から上流の状況を監視する等の措置を講ずること。
 (3) 安衛則第575条の14及び安衛則第575条の15に基づき、警報用設備及び避難用設備の点検を実施す
  るとともに、警報及び避難の方法等を労働者に十分周知すること。

3 がれき処理作業における安全確保及び石綿粉じん等のばく露防止対策
 (1) 円滑な災害復旧の観点から短期間での作業が求められるが、労働災害防止のため、当日の作業内容、
  安全上の注意事項等について作業開始前のミーティング等を綿密に実施すること。
 (2) がれき処理作業に当たっては、車両系建設機械を使用した作業と人力による作業が輻輳して行われ
  ることが想定されるため、安衛則第155条に基づき、作業全体の計画を作成し、これに基づく作業を
  徹底すること。
   また、車両系建設機械を用いて作業を行うときは、安衛則第158条に基づき、立入りを禁止する措
  置を講ずる、又は誘導者を配置してその者に車両系建設機械を誘導させることにより、車両系建設機
  械相互又は車両系建設機械と作業員との接触防止を徹底すること。
 (3) 不安定な作業場所において車両系建設機械を使用して作業を行うこととなるため、安衛則第157条
  に基づく車両系建設機械の転倒防止対策の徹底を図ること。
 (4) 車両系建設機械の運転の業務については、技能講習を修了した者等必要な資格を有する者に行わせ
  ること。
 (5) がれき処理作業については、適切な呼吸用保護具の着用等、石綿粉じん及びその他の粉じんを吸入
  することを防止するための措置を徹底すること。

4 墜落・転落による労働災害の防止
 (1) 高さ2メートル以上の箇所で作業を行う必要がある場合には、安衛則第518条第1項に基づき、足場
  を組み立てる等の方法により作業床を設けること。
 (2) 足場の組立、解体等の作業は、安衛則第36条第39号の特別教育を受けた者に行わせるとともに、安
  衛則第564条に基づき足場の組立て等の作業時における災害の防止に留意すること。また、足場につ
  いては、安衛則第563条第1項に基づき適切な構造及び機能を有するものとすること。
 (3) 作業床の設置が困難な場合については、安衛則第518条第2項に基づき、防網の設置、安全帯の使用
  等労働者の墜落による危険を防止するための措置を確実に講ずること。
 (4) 被害を受けた建築物等の外部に足場を設置して作業を行う場合には、壁つなぎや控えの強度を確認
  し、足場の安定性を確保することに留意すること。
 (5) 木造家屋等低層住宅の屋根の改修工事等で作業床を設けることが困難な場合には、安全帯等の取付
  設備を設置した上で、安全帯を確実に使用させること。この際には、リーフレット「足場の設置が困
  難な屋根上作業での墜落防止対策のポイント」※を参考にすること。
 ※http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/140805-1.pdf

5 その他
  工事に伴う作業中に窮迫した危険が生じた場合における緊急連絡体制を確立するとともに、避難の方
 法等を労働者に十分周知すること。
  また、倒壊のおそれのある家屋等の建築物に不用意に接近しないようにするとともに、建設機械を使
 用する作業場所においては、機械との接触防止措置等を徹底すること。
  上記3(5)のほか、建築物の改修の作業など、石綿粉じん及びその他の粉じんを吸入するおそれのある
 作業については、適切な呼吸用保護具の着用等を徹底すること。
  暑熱又は寒冷な環境における作業については、作業開始前に健康状態を確認する等、健康障害を防止
 するための必要な措置を行うことについても留意すること。


 (添付)関連リーフレット
 ・資料1 災害からの復旧工事の安全な施工について
 ・資料2 がれきの処理作業を行う際の注意事項〜がれき処理作業を行う皆様へ〜
 ・資料3 がれきの処理作業を行う際の注意事項〜事業者の皆様へ〜




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