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安全衛生情報センター
職場における熱中症防止のためのガイドライン
第1 目的等
1 目的
本ガイドラインは、労働安全衛生関係法令と相まって、職場における熱中症防止のための労働衛生
管理体制の確立・作業環境管理・作業管理・健康管理・労働衛生教育等の熱中症リスクに応じて行う
ことが望ましい具体的方法を一体的に示し、事業者がその業種・業態に応じて適切に選択して取り組
むよう促すことにより、職場における熱中症による労働災害等の防止を図ることを目的とする。事業
者、作業従事者(労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)によ
る改正後の労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「安衛法」という。)第15条第1項に規定する
者。以下同じ。)だけでなく、注文者、作業場所管理事業者、労働者と異なる場所で就業する労働者
以外の作業従事者(以下「労働者と異なる場所で就業する個人事業者等」という。)においても、本ガ
イドラインを参考に熱中症防止対策を検討・実施することが望ましい。
2 適用
本ガイドラインは、熱中症のおそれのある全ての作業を対象とする。
3 実施事項
事業者は、第2に基づき、熱中症によるリスクを把握・評価した上で、その結果に基づき実施する
ことが適切な対策を第3に掲げる措置から選択して実施することが考えられる。なお、労働安全衛生
規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)に定められた措置は、実施しなければなら
ないこと。
作業従事者についても、自らの作業環境等における熱中症によるリスクの有無などについて、自ら
で危険予知を行い、可能な範囲でリスクの低減に努めることが求められる。
なお、労働者と異なる場所で就業する個人事業者等については、自らの熱中症の発症を予防するた
めに、各種支援を活用しつつ、事業者と同様の対応を行うことが望ましいこと。
第2 熱中症リスクの評価
1 有害性の要因の特定
(1) WBGT値の低減等
熱中症リスクを評価するためには、まず、事業場において、熱中症リスクとなり得る暑熱に関す
る要因があるかを特定すること。暑熱に関する要因としては、
・ 身体からの熱放散の阻害要因として、①高温・多湿な作業環境、②連続作業、③通気性や透湿
性の低い衣服や保護具
・ 身体からの熱産生の上昇要因として、④身体作業負荷の大きい作業
が挙げられる。
具体的には、事業場において、温度や湿度が高くないか、連続した作業をしていないか、通気性
や透湿性が低い衣服や呼吸用保護具を着用していないか、身体作業負荷が大きい作業をしていない
かなどについて検討すること。
2 湿球黒球温度の値(WBGT値)の把握
熱中症リスクを評価するために最も基本となる手法は、WBGTの把握である。
WBGTは、暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数であり、作業場所にWBGT指数計を設置す
る等により、湿球黒球温度の値(以下「WBGT値」という。)を求めることが望ましいこと。
WBGT値の把握に当たり、日本産業規格JIS Z 8504又はJIS B 7922に適合したWBGT指数計を準備し、
点検すること。黒球がないなど日本産業規格に適合しない測定器では、屋外や輻射熱がある屋内の作
業場所で、WBGT値が正常に測定されない場合があること。
WBGT値の把握は、上記日本産業規格に適合したWBGT指数計による随時把握(時刻や場所によって気
温が変化することを考慮することが望ましい。)を基本とすること。その地域を代表する一般的なWBGT
を参考とすることは有効であるが、個々の作業場所や作業ごとの状況は反映されていないことに留意
すること。特に、測定方法や測定場所の差異により、参考値は、実測したWBGT値よりも低めの数値と
なることがあるため、直射日光下における作業、炉等の熱源の近くでの作業、冷房設備がなく風通し
の悪い屋内における作業については、実測することが必要であること。
なお、地域を代表する一般的なWBGTは環境省熱中症予防情報サイト等に掲載されている。
3 熱中症リスクの評価・検討
把握したWBGT値を元に、作業や作業場所の状況に応じ、連続作業時間、服装、作業の身体負荷を勘
案し、熱中症リスクが大きいかどうかを見積もること。熱中症に関するリスクの見積り、措置の検討
は以下のように行うことが考えられる。
(1) 熱中症リスクの評価
2で示した方法によりWBGT値を把握した上で、実測したWBGT値に対し、表1-2に基づき着衣補正を
行うこと。着衣補正値を加えたWBGT値を、表1-1に掲げる身体作業強度及び暑熱順化の状況に応じ
たWBGT基準値に照らして、熱中症リスクを正しく見積もること。着衣補正値を加えたWBGT値が、表
1-1に掲げるWBGT基準値を超えている又は超えるおそれのある場合には、冷房等により当該作業場
所のWBGT値の低減を図ること、身体作業強度(代謝率レベル)の低い作業に変更すること、WBGT基準
値より低いWBGT値である作業場所での作業に変更すること等の熱中症予防対策を、作業の状況等に
応じて実施するよう努めること。
なお、着衣補正値を加えたWBGT値がWBGT基準値を超えない場合であっても、WBGT基準値が前提と
している条件に当てはまらないとき又はそもそもWBGT基準値を算出することができないときなど、
熱中症リスクがあるときは、当該WBGT値がWBGT基準値を超えている又は超えるおそれのある場合と
同様に、対策を行うことが望ましいこと。
(2) 熱中症リスクの低減のための措置の検討
ア まずは、着衣補正値を加えたWBGT値に係る作業場所のWBGT値の低減を検討すること(作業環境
管理)。低減の方法については第3の2を参考に、事業場の実情を踏まえて検討すること。
イ WBGT値の低減のための措置を行うことができない又は行ってもWBGT値がWBGT基準値を超えてい
る又は超えるおそれのある場合には、第3の3を参考に、事業場の実情を踏まえて作業管理を検討
すること。
ウ 一般に暑さや水分不足に対する感覚機能が低下しており暑さに対する身体の調節機能も低下し
ている高年齢作業従事者や、熱中症の発症リスクに影響を与える可能性のある疾病や障がいを持
つ作業従事者については、作業管理の検討の際、作業時間の短縮、身体作業強度の低減等を検討
するなど、特に留意すること。
第3 熱中症リスクに応じた措置
1 労働衛生管理体制の確立等
事業場における熱中症防止対策については、衛生委員会、安全衛生委員会又はこれらを設けていな
い事業場における労働者の意見を聴く機会等を活用し、労働者の理解と協力を得つつ労使で話し合い、
その内容を労働者に対して周知することが重要である。また、夏季の対策の効果を、秋季や冬季など
に同様の会議体で確認し、次の年の夏季に向けた対策に活用することが望ましいこと。
(1) 各種管理者等の選任と役割
事業者は、産業医の意見も参考にしながら、衛生管理者(50人未満の事業場では安全衛生推進者
又は衛生推進者)を中心に、本ガイドラインに掲げる熱中症防止対策について検討させ、以下の(ア)
〜(ク)に掲げる業務を行わせるとともに、事業場における熱中症防止に係る責任体制の確立を図る
こと。
なお、職長等の現場で作業を管理する者等、衛生管理者、安全衛生推進者等以外の者に熱中症予
防対策を行わせる場合は、5の(1)の教育研修を受けた者等熱中症について必要な知識を有する者の
うちから、熱中症予防管理者を選任すること。
(ア) 作業に応じて、適用すべきWBGT基準値を決定し、併せて衣類に関しWBGT値に加えるべき着衣
補正値の有無を確認すること。
(イ) WBGT値の低減対策を検討し、その実施状況を確認すること。
(ウ) 入職日、作業や休暇の状況等に基づき、あらかじめ各作業従事者の暑熱順化の状況を確認する
こと。なお、あらかじめ暑熱順化不足の疑われる作業従事者は第3の3の(2)に示す暑熱順化プロ
グラムに沿って暑熱順化を行う必要があること。
(エ) 朝礼時等作業開始前において作業従事者の体調及び暑熱順化の状況を確認すること。
(オ) 作業場所のWBGT値の把握と結果の評価を行う。事業者は、評価結果に基づき、必要に応じて作
業時間の短縮等の措置を検討すること。
(カ) 職場巡視を行い、作業従事者の水分及び塩分の摂取状況を確認すること。
(キ) 退勤後に体調が悪化しうることについて注意喚起すること。
(ク) 熱中症に関する労働衛生教育の実施状況を確認すること。
(2) 作業手順・作業計画の策定
夏季の暑熱環境下における作業に対する作業手順・作業計画を策定すること。作業手順・作業計
画には、特に新規入職者や休み明けの作業従事者については、熱中症を発症するリスクが高いため、
作業内容等を十分に考慮した暑熱順化プログラム、WBGT値に応じた十分な休憩時間の確保、WBGT基
準値を踏まえた作業中止に関する事項を含める必要があること。なお、休憩時間の確保や作業中止
に関する事項の検討に当たっては、作業場の設備、休憩場所、作業従事者の服装等の状況に基づい
て実施する対策、労働衛生教育、労働衛生管理体制、あらかじめ定めた緊急時の体制等の状況を十
分に踏まえたものとすること。
(3) 報告体制の整備及び手順等の作成並びに周知
事業者は、安衛則第612条の2に基づき、WBGT値が28度以上又は気温が31度以上の場所において
継続して1時間以上又は1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業(以下「熱中症を生ずるお
それのある作業」という。)を行わせるときは、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状がある
場合や、当該作業に従事する者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の者が発
見した場合にその旨を報告させるための体制を整備し、関係者に周知すること。また、当該作業以
外の作業に従事する者にも周知することが望ましいこと。報告体制の整備については、作業従事者
から電話等による報告を受けることや第3の3の(6)の巡視のほか、2人以上の作業者が同時に作業を
行うことにより互いの健康状態を確認させるバディ制の採用、ウェアラブルデバイスを用いた作業
者の熱中症のリスク管理等が挙げられること。ただし、ウェアラブルデバイスによる管理について
は、必ずしも当該機器を着用した者の状態を正確に把握することができるわけではないため、他の
方法と組み合わせること等により、リスク管理の精度を高めることが望ましいこと。
また、事業者は、熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、
当該作業からの離脱、身体冷却、必要に応じての医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中
症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順や緊急連絡先を定め、
当該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその手順等を周知させなければならないこと。
手順等の作成に当たっては、必要に応じて手順例①及び②を参考にされたいが、必ずしもこれら
によらず、作業場所及び作業内容の実態を踏まえて、事業場独自の手順等を定めて差し支えないこ
と。
2 作業環境管理
(1) WBGT値の低減
事業者は、過去に熱中症による労働災害が発生した場所など、WBGT基準値を超えている又は超え
るおそれのある場所において作業を行うことが予定されている場合には、以下に掲げる措置を例と
してWBGT値低減対策を講ずること等により、WBGT値の低減に努めること。
ア WBGT基準値を超えている又は超えるおそれのある作業場所(以下単に「高温多湿作業場所」と
いう。)においては、発熱体と作業従事者の間に熱を遮ることのできる遮へい物等を設けること。
イ 屋外の高温多湿作業場所においては、直射日光並びに周囲の壁面及び地面からの照り返しを遮
ることができる簡易な屋根等を設けること。
ウ 高温多湿作業場所に適度な通風又は冷房を行うための設備やミストシャワー等による散水設備
などを設け、既に設置している冷房設備等については、その機能を点検すること。
なお、屋内の高温多湿作業場所における当該設備は、除湿機能があることが望ましいこと。
また、通風が悪い高温多湿作業場所での散水については、散水後に湿度が上昇することや滑り
やすくなることに注意すること。
(2) 休憩場所の整備等
熱中症の重篤化を防ぐためには、適切な身体冷却が有効であるため、事業者は、作業場所の近く
に冷房を備えた休憩場所又は日陰等の涼しい休憩場所を確保すること。休憩場所は、空調設備等を
備えていることが望ましいが、場所によっては制約要件があることに留意すること。休憩場所は、
以下の点に留意して確保すること。
ア 休憩の設備の設置については、作業場の性質により個別に可否を判断されるものであるが、港
湾などの広い場所の場合は、熱中症の予防の観点から、休憩の設備はできる限り作業従事者が速
やかに利用できる場所に設置することが望ましいこと。
イ 休憩場所は、足を伸ばして横になれる広さを確保すること。
ウ 休憩場所又はその近隣に空調設備、氷、アイススラリー(流動性の氷状飲料)、冷たいおしぼり、
水風呂、シャワー等の身体を適度に冷やすことのできる設備又は物品を設けること。
エ 電気、水道等のインフラが使用できない場所であっても、日傘や日よけテント等により日陰を
作ることなどが有効であること。
オ 水分及び塩分の補給を行えるよう高温多湿作業場所の近傍に飲料水、スポーツドリンク、経口
補水液、塩飴等の備付け等を行うこと。配備にあたっては、糖分、塩分の含有量が摂取者に分か
るものが望ましいこと。
カ 熱中症のおそれのある作業従事者を発見し、作業離脱、身体冷却を行う際、当該作業従事者を、
救急搬送前などに一時的に休憩させる場合は、休憩する者を一人きりにしないこと。熱中症のお
それのある又は発症した作業従事者を、救急搬送前などに一時的に休憩させる場合に備え、例え
ば、1の(3)で定めた熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の者が発見した場合
にその旨を報告させるために整備した緊急連絡先などの体制や、熱中症の症状の悪化を防止する
ために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を休憩室内に掲示することなどが考えられる
こと。
3 作業管理
(1) 作業時間の短縮等
1の(2)で検討した作業手順・作業計画に基づき、熱中症予防対策を作業の状況等に応じて実施す
るよう努めること。熱中症予防対策は、以下のものが考えられること。
ア 作業の休止時間及び休憩時間を確保し、高温多湿作業場所での作業を連続して行う時間を短縮
するよう努めること。休憩時間については、表1-1の注3を参考に、WBGT基準値に応じたものとす
ること。WBGT値を測定し、着衣補正値を加えたWBGT値がWBGT基準値を大幅に超える場合は、原
則として作業を行わないこととすること。WBGT基準値を大幅に超える場合に、やむを得ず作業を
行うときは、単独作業を控え、休憩時間を長めに設定することに留意すること。
イ 身体作業強度(代謝率レベル)が高い作業を避けること。
ウ 可能であれば、日陰の場所に作業場所を変更すること。
(2) 暑熱順化
高温多湿作業場所において作業従事者を作業に従事させる場合には、暑熱順化(熱に慣れ当該環
境に適応すること)の有無が、熱中症の発症リスクに大きく影響することを踏まえ、計画的に、暑
熱順化期間を設けること。特に、梅雨から夏季になる時期において、気温等が急に上昇した高温多
湿作業場所で作業を行う場合、新規入職者などが新たに当該作業を行う場合、又は、作業従事者が
長期間、当該作業場所での作業から離れ、その後再び当該作業を行う場合等においては、通常、当
該作業従事者は暑熱順化していないことに留意が必要であること。その場合は、暑熱順化プログラ
ムに沿って暑熱順化を行うとともに、WBGT値に応じた作業の中断等を徹底すること。
暑熱順化の方法としては、7日以上かけて暑熱環境での身体的負荷を増やし、作業時間を調整し、
次第に長くすることが挙げられる。特に、新規入職者等に対して他の作業従事者と同様の暑熱作業
を行わせないよう、計画的な暑熱順化プログラムを組むこと。
暑熱順化の方法の例としては、職場での暑熱順化は暑さが本格化する前に作業時間を徐々に伸ば
すなど調整し、発汗しやすい服装等で作業負荷をかけ、個人の健康状態を確認しながら7日以上か
けて実施することが考えられる。職場以外でも、個人の運動、入浴等日常生活で無理のない範囲で
汗をかくようにすることでも可能である。
なお、夏季休暇等のため熱へのばく露が中断すると4日後には暑熱順化の顕著な喪失が始まり、
3〜4週間後には完全に失われることに留意すること。
このため、連休前に7日以上かけて身体的負荷を増やすなど暑熱順化した作業従事者についても、
連休後には、休暇中の活動状況をヒアリングするなどして、必要に応じ、暑熱順化期間の延長や、
追加の暑熱順化を行うことも考えられる。
暑熱順化ができていない場合には、特に作業時間の短縮を検討すること。なお、いわゆる「スポ
ットワーク」を利用する労働者を含め、夏季に短期間就労する者については、短期での暑熱下での
作業を連続して繰り返している場合など、暑熱順化ができていると確実に把握できた場合を除き、
原則として、暑熱順化されていない者として取り扱うことが望ましいこと。
(3) プレクーリング
WBGT値が高い暑熱環境下で、作業強度を下げたり通気性の良い衣服を採用したりすることが困難
な作業においては、作業開始前にあらかじめ深部体温を下げ、作業中の体温上昇を抑えるプレクー
リングについては、体表面から冷却する方法と、冷水やアイススラリー(流動性の氷状飲料)などを
摂取して体内から冷却する方法を検討すること。また、必要に応じて休憩時間中のプレクーリング
も検討すること。
(4) 水分及び塩分の摂取
安衛則第617条により、多量の発汗を伴う作業場では、塩及び飲料水を備え付けることが義務付
けられており、当該作業場では、飲料水、スポーツドリンク、経口補水液、塩飴等を備え付けなけ
ればならないこと。
高温多湿作業場所においては、作業従事者について自覚症状以上に脱水状態が進行していること
があること等に留意の上、作業従事者の自覚症状の有無にかかわらず、水分及び塩分の作業前後の
摂取及び作業中の定期的な摂取を指導するとともに、作業従事者の水分及び塩分の摂取を確認する
ための表の作成、作業中の巡視における確認等により、定期的な水分及び塩分の摂取の徹底を図る
こと。
塩分を摂取するときには、0.1〜0.2%の食塩水、ナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリン
ク等を20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度を摂取することが望ましいが、摂り過ぎに注意すること。
なお、尿の回数が少ない又は尿の色が普段より濃い状態は、体内の水分が不足している状態である
可能性があることを作業従事者に周知すること。
特に、加齢や疾病によって脱水状態であっても自覚症状に乏しい場合があることに留意すること。
また、高血圧であって塩分等の摂取が制限される、糖尿病であって糖分等の摂取が制限されるなど
基礎疾患を有する作業従事者については、主治医、産業医等に相談させること。
(5) 服装による身体冷却
作業の性質上通気性の確保等が困難ではない場合は、熱を吸収し、又は保熱しやすい服装は避け、
透湿性及び通気性の良い服装を着用させること。また、直射日光下における作業が予定されている
場合には、通気性の良い帽子、ヘルメット等を準備すること。服装等の選定に当たっては、作業の
実態に合わせ、送風や送水により身体を冷却する機能を持つ服やヘルメットの中から適切なものを
採用するなど、作業中の深部体温上昇の抑制に資するものを積極的に採用すること。
なお、身体を冷却する機能を持つ服を着用することは一定程度有効ではあるが、それのみでは熱
中症を防止することは困難であるため、他の対策と組み合わせて実施することが望ましいこと。
また、作業従事者の安全衛生確保のために、事業者が業務に関連し衣類や保護衣を指定すること
が必要な場合には、あらかじめ衣類の種類を確認し、WBGT値の補正(表1-2)の必要性を考慮するこ
と。
(6) 作業中の巡視
定期的な水分及び塩分の摂取に係る確認を行うとともに、作業従事者の健康状態等(心拍数、体
温及び尿の回数・色等の身体状況)を確認し、熱中症を疑わせる兆候が現れた場合において速やか
に作業の中断その他必要な措置を講ずること等を目的に、高温多湿作業場所での作業中は巡視を頻
繁に行い、声をかける等して作業従事者の健康状態を確認すること。また、長時間の単独作業を避
け、なるべく短時間にさせること。複数の作業従事者による作業においては、作業従事者にお互い
の健康状態について留意するよう指導するとともに、異変を感じた際には躊躇することなく周囲の
作業従事者やあらかじめ定められた担当者に申し出るよう指導すること。また、熱中症の発症しや
すさには個人差があるため、単独作業が避けられない場合などは、ウェアラブルデバイス等の導入
による作業従事者の状態のリアルタイムでの把握と組み合わせることを検討することや体調の定期
連絡など常に状況を確認できる態勢を確保することが望ましいこと。
(7) 業種・作業別の対応例
作業管理に当たり、業種・作業別の対応例は、以下のものが挙げられる。
ア 建設現場をはじめとする屋外作業の場合
・ 太陽の位置を考慮して日陰となる場所で作業を行う、早朝から作業を行い、早帰りとするな
どにより直射日光下での作業時間を短縮する。
・ 休憩場所まで遠い場合は、移動時間を考慮した休憩時間を設定する。
イ 運送業等の場合
・ 日陰でこまめに休憩する。
・ 温度差の大きい車内外を行き来することで身体に負担がかからないよう、自動車運転時に窓
を開けて走るなどして車内外の温度差を作らないようにする。
・ 自転車に給水ボトルを付け、水分摂取を容易にする。
ウ 重量物の運搬作業など身体作業強度が高い作業を行う場合は、台車、リフターを使用する、複
数人で作業するなど1人当たりの身体作業への負荷を下げる。
エ 夜間のビルメンテナンス業等、屋内作業であっても冷房設備が停止している場合は、通気性の
良い服装を着用させ、単独作業を避ける。
オ 調理場では、グリスフィルターの清掃により排気機能を確保し、温度上昇を抑制する。
カ WBGT値が極めて高い傾向にあるビニールハウス、畜舎等での作業は、早朝作業を行い、こまめ
に日陰で休憩する。
4 健康管理
熱中症の発症者については、当日又は前日に、睡眠不足、食欲低下、下痢や感冒様症状、全身倦怠
感などの比較的軽微な体調変化が先行し、それが暑熱ばく露と重なることで急激に重症化する例が多
いため、事業者による健康診断結果に基づく対応のみならず、作業開始前に、当日の体調に普段と異
なる点がないか等を確認することや、作業従事者自身の日常の健康管理が重要である。
(1) 健康診断結果に基づく対応
安衛則第43条、第44条及び第45条の規定に基づく健康診断の項目には、熱中症の発症に影響を与
えるおそれのある疾病と密接に関係した血糖検査、尿検査、血圧の測定、既往歴の調査等が含まれ
ていること及び安衛法第66条の4及び第66条の5の規定に基づき、異常所見があると診断された場合
には医師等の意見を聴き、当該意見を勘案して、必要があると認めるときは、事業者は、就業場所
の変更、作業の転換等の適切な措置を講ずることが義務付けられていることに留意の上、これらの
徹底を図ること。
また、熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾病の治療中等の作業従事者については、事業
者は、高温多湿作業場所における作業の可否、当該作業を行う場合の留意事項等について産業医、
主治医等の意見を勘案して、必要に応じて、就業場所の変更、作業の転換等の適切な措置を講ずる
こと。
なお、熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病は以下のものが挙げられる。その詳細につ
いては、「(参考)熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病の特徴等」を参照すること。
①糖尿病、②高血圧症、③心疾患、④腎不全、⑤精神・神経関係の疾患、⑥広範囲の皮膚疾患、
⑦感冒等、⑧下痢等
(2) 日常の健康管理等
高温多湿作業場所で作業を行う作業従事者については、睡眠不足、体調不良、前日等の飲酒、朝
食の未摂取等が熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることに留意の上、日常の健康管理につい
て指導を行うとともに、必要に応じ健康相談を行うこと。これを含め、安衛法第69条の規定に基づ
き健康の保持増進のための措置を講ずるよう努めること。
さらに、熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾病の治療中等である場合は、熱中症を予防
するための対応が必要であることを作業従事者に対して教示するとともに、作業従事者が主治医等
から熱中症を予防するための対応が必要とされた場合又は作業従事者が熱中症を予防するための対
応が必要となる可能性があると判断した場合は、事業者に申し出るよう指導すること。
また、熱中症の具体的症状について作業従事者に教育し、作業従事者自身が早期に気づくことが
できるようにすること。
(3) 作業従事者の健康状態及び暑熱順化の状況等の確認
当日の作業開始前に、当日の朝食の未摂取、睡眠不足、前日の多量の飲酒、体調不良等の健康状
態の確認を行うこと。また、職長等の管理者は、入職後1週間未満の作業従事者及び夏季休暇等の
ために熱へのばく露から4日以上離れていた作業従事者をあらかじめ把握し、巡視の頻度を増やす
などして当該作業従事者の作業時間中や作業終了時における健康状態に特に配慮すること。作業開
始前に、作業従事者に対し、当日の体調に普段と異なる変化がないか、睡眠不足等がないかなど、
声かけなどをすることが望ましいこと。
健康状態又は暑熱順化の状況から熱中症の発症リスクが高いと疑われる者に対しては、必要に応
じ作業の配置換え等を行うこと。
また、休憩場所等に体温計、体重計等を備え、必要に応じて、体温、体重その他の身体の状況を
確認できるようにすること。
作業従事者は、作業当日に体調に普段と異なる変化や、睡眠不足等がある場合は、職長等の管理
者に申し出ることが望ましいこと。これらの情報を申し出られた事業者は、その情報について、プ
ライバシーに配慮して取り扱うこと。
5 労働衛生教育
事業場で熱中症防止対策を的確に行うためには、対策に関わる熱中症予防管理者、職長等現場で作
業従事者を指揮する者及び作業従事者に対し、それぞれ(1)〜(3)に掲げる事項、範囲及び時間により、
熱中症に係る労働衛生教育を行うことが望ましい。なお、教育の実施時期については、雇入れ時教育
の機会に行うなど、事業場の実情を踏まえたものとすること。また、簡単な教材でも繰り返し参照す
ることが望ましいこと。
教材は、厚生労働省が運営しているポータルサイトに掲載しているものも活用できること。なお、
事業者が自ら当該教育を行うことが困難な場合には、関係団体が行う教育を活用すること。
(1) 熱中症予防管理者労働衛生教育(必要に応じて衛生管理者や安全衛生推進者も受講することが望
ましい。)
| 事項 |
範囲 |
時間 |
| (1) |
熱中症の症状* |
- 熱中症の概要
- 職場における熱中症の特徴
- 体温の調節
- 体液の調節
- 熱中症が発生する仕組みと症状
|
30分 |
| (2) |
熱中症の予防方法* |
- 熱中症リスク要因とWBGT(意味、WBGT基準値に基づく評価)
- 作業環境管理(WBGT値の低減、休憩場所の整備等)
- 作業管理(作業時間の短縮、暑熱順化、水分及び塩分の摂取、服装、作業中の巡視等)
- 健康管理(健康診断結果に基づく対応、日常の健康管理、作業従事者の健康状態の確認、身体の状況の確認等)
- 労働衛生教育(作業従事者に対する教育の重要性、教育内容及び教育方法)
- 熱中症予防対策事例
|
150分 |
| (3) |
緊急時の救急処置 |
- 報告体制の整備及び周知・手順等の作成及び周知
- 緊急時の救急措置
|
15分 |
| (4) |
熱中症の事例 |
|
15分 |
| (5) |
関係法令等 |
|
15分 |
注 対象者の熱中症に対する基礎知識の状況に応じ、(1)及び(2)をそれぞれ15分、75分に短縮して行うこ
ととして差し支えない。
(2) 職長等現場で作業従事者を指揮する者向け教育
| 事項 |
範囲 |
時間 |
| (1) |
熱中症の症状 |
- 熱中症の概要
- 職場における熱中症の特徴
- 熱中症が発生する仕組みと症状
|
10分 |
| (2) |
熱中症の予防方法 |
- 作業環境管理(WBGT値の低減、休憩場所の整備等)
- 作業管理(作業時間の短縮、水分及び塩分の摂取、服装、作業中の巡視等)
- 健康管理(日常の健康管理、作業従事者の健康状態の確認、身体の状況の確認等)
- 熱中症予防対策事例
|
25分 |
| (3) |
緊急時の救急処置 |
- 報告体制の整備及び周知・手順等の作成及び周知
- 緊急時の救急措置
|
10分 |
| (4) |
熱中症の事例 |
|
10分 |
| (5) |
関係法令等 |
|
5分 |
注 (1)の熱中症予防管理者労働衛生教育の受講で代替可能。
(3) 作業従事者向け教育(短時間で、繰り返すことが望ましいこと。)
| 事項 |
範囲 |
| (1) |
熱中症の症状 |
- 熱中症の概要
- 職場における熱中症の特徴
- 体温の調節
- 体温の調節
- 熱中症が発生する仕組みと症状
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| (2) |
熱中症の予防方法 |
- WBGT値の意味
- 現場での熱中症予防活動(暑熱順化、水分及び塩分の摂取、服装、日常の健康管理等)
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| (3) |
緊急時の救急処置 |
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| (4) |
熱中症の事例 |
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6 異常時の措置
熱中症を疑わせる具体的な症状については表2に掲げる「熱中症の症状と分類」を参考にすること。
熱中症を疑わせる症状が現れた場合、周囲の作業従事者等は、熱中症が疑われる作業従事者を、必
ず、一旦、作業から離し、救急処置として涼しい場所で当該者の身体を冷やし、水分及び塩分の摂取
等を行わせること。また、症状に応じ、救急隊を要請し、又は医師の診察を受けさせること。
なお、周囲の作業従事者等は、本人に自覚症状がない、又は大丈夫との本人からの申出があったと
してもためらわずに、あらかじめ定められた担当者に連絡し、措置の実施手順に従って、医療機関へ
の搬送や救急隊の要請を行うこと。判断に迷う場合には、放置したり、措置を躊躇して先送りにした
りせず、#7119等を活用するなど専門機関や医療機関に相談し、速やかに専門家の指示を仰ぐことが
望ましいこと。医療機関に搬送するまでの間や救急隊が到着するまでの間には、十分に涼しい休憩場
所に避難させた上で、必要に応じてアイススラリー(流動性の氷状飲料)や経口補水液などの水分・塩
分を摂取させる、作業着を脱がせて水をかけて全身を急速冷却する、アイスバスに入れる、ミストフ
ァンを当てる、濡れタオルなどを身体に当て、扇風機で風を当てるなどにより効果的な身体冷却に努
めること。この間、容態が急変する場合があることから、熱中症を生じたおそれがある作業従事者を
一人きりにすることなく、他の作業従事者等が見守ることが重要である。
熱中症を疑わせる症状としては、ふらつき、発汗、けいれん、めまい、頭痛等が挙げられるので、
5の(3)の労働衛生教育で作業従事者に周知すること。
7 その他
(1) 実施時期
当年の気温上昇の状況や地域差にもよるが、おおむね4月中までに、夏季に「第2 熱中症のリス
クの評価」、第3の「1 労働衛生管理体制の確立等」、「2 作業環境管理」、「3 作業管理」、
「4 健康管理」、「5 労働衛生教育」が円滑かつ継続的に実施できるよう準備することが望まし
いこと。
特に、気温が急激に上昇する時期や、猛暑日等は、熱中症の発生リスクが高くなる傾向があるこ
とから、作業従事者に対して、いつも以上に注意喚起することが重要である。
(2) いわゆる「スポットワーク」を利用する労働者について
いわゆる「スポットワーク」を利用する労働者については、当然に安衛則第612条の2で定めた体
制や手順の周知対象である上、雇入れ時教育の対象ともなる。そのため、当該労働者を使用する事
業者は、特に夏季においては、これらの労働者に対しても、法令や本ガイドラインに基づく措置を
講じること。
(3) 注文者や作業場所管理事業者による配慮
仕事を他人に注文する者については、特に当該仕事に係る夏季の屋外作業が、熱中症のおそれの
ある作業となる可能性が高いことから、経費や工期・納期について配慮することが望ましいこと。
また、注文者は、熱中症の発症や重篤化を防ぐために作業中に作業従事者が休憩や水分補給をす
る可能性があることについて理解することが重要である。
作業場所管理事業者については、当該場所で作業する作業従事者が熱中症を発症した際は、当該
作業従事者の緊急連絡先や医療機関に連絡することが望ましいこと。そのためには、作業従事者は、
緊急連絡先や、可能であれば既往歴を記載したカードを携行する、着用している服の分かりやすい
ところに貼るなど、工夫することが重要である。
また、作業場所管理事業者は、当該場所での作業を請け負った事業者から休憩場所について要望
等を受けた場合は、誠実に協議して適切に対応することが望ましいこと。
併せて、注文を受けた者は、熱中症の発症や重篤化を防ぐために作業中に作業従事者が休憩等す
る可能性があることについては、あらかじめ注文者や作業場所管理事業者に対して伝達することが
望ましいこと。
(4) 労働者と異なる場所で就業する個人事業者等について
労働者と異なる場所で就業する個人事業者等については、熱中症による重篤化の防止のためには、
熱中症の症状を自覚したときの連絡先や手順を自ら決定して対応するなど、本ガイドラインを参考
に自ら熱中症防止に取り組むことが必要であることに留意すること。なお、熱中症の症状を自覚し
たときの連絡先としては、#7119などが考えられること。
また、作業従事者向けの教材や、元方事業者などから配布される資料などを用いて、繰り返し自
ら熱中症の症状や防止対策などの知識を習得することが重要である。