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事業場における労働者の健康保持増進のための指針


 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第70条の2第1項の規定に基づき、事業場における労働者の健康
保持増進のための指針を次のとおり公表する。

事業場における労働者の健康保持増進のための指針

1 趣旨
  近年の高年齢労働者の増加、急速な技術革新の進展等の社会経済情勢の変化、労働者の就業意識や働
 き方の変化、業務の質的変化等に伴い、定期健康診断の有所見率が増加傾向にあるとともに、日本人の
 三大死因の2つを占める心臓病及び脳卒中の誘因となるメタボリックシンドロームが強く疑われる者と
 その予備軍は、2千万人近くに上ると推計されている。また、仕事に関して強い不安やストレスを感じ
 ている労働者の割合が高い水準で推移している。
  このような労働者の心身の健康問題に対処するためには、早い段階から心身の両面について健康教育
 等の予防対策に取り組むことが重要であることから、事業場において、全ての労働者を対象として心身
 両面の総合的な健康の保持増進を図ることが必要である。なお、労働者健康の保持増進を図ることは、
 労働生産性向上の観点からも重要である。
  また、事業場において健康教育等の労働者の健康の保持増進のための措置が適切かつ有効に実施され
 るためには、その具体的な実施方法が、事業場において確立していることが必要である。
  本指針は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第70条の2第1項に基づき、同法第69条第1項の事業
 場において事業者が講ずるよう努めるべき労働者の健康の保持増進のための措置(以下「健康保持増進
 措置」という。)が適切かつ有効に実施されるため、当該措置の原則的な実施方法について定めたもの
 である。事業者は、健康保持増進措置の実施に当たっては、本指針に基づくとともに、全ての措置の実
 施が困難な場合には、可能なものから実施するなど、各事業場の実態に即した形で取り組むことが望ま
 しい。

2 健康保持増進対策の基本的考え方
 近年における医学の進歩に伴い、心疾患、高血圧、糖尿病などの生活習慣病及びメタボリックシンドロ
 ームについては、若年期から継続した適切な運動を行い、健全な食生活を維持し、ストレスをコントロ
 ールすることにより、予防できることが明らかにされてきた。また、
 健康管理やメンタルヘルスケア等心身両面にわたる健康指導技術の開発も進み、多くの労働者を対象と
 した健康の保持増進活動が行えるようになってきた。
  また、労働者の健康の保持増進には、労働者自らが自主的、自発的に取り組むことが重要である。し
 かし、労働者の働く職場には労働者自身の力だけでは取り除くことができない疾病増悪要因、ストレス
 要因などが存在しているので、労働者の健康を保持増進していくためには、労働者の自助努力に加えて、
 事業者の行う健康管理の積極的推進が必要である。その健康管理も単に健康障害を防止するという観点
 のみならず、更に一歩進んで、労働生活の全期間を通じて継続的かつ計画的に心身両面にわたる積極的
 な健康保持増進を目指したものでなければならない。
  労働者の健康の保持増進のための具体的措置としては、健康測定(健康度測定すなわち健康保持増進
 のための健康測定をいう。以下同じ。)とその結果に基づく運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導、
 保健指導等があり、これらの事項は、それぞれに対応したスタッフの緊密な連携により推進されなけれ
 ばならない。

3 健康保持増進計画等
 (1) 健康保持増進計画の策定
  イ 健康測定、運動指導等の健康保持増進措置は、中長期的視点に立って、継続的かつ計画的に行わ
   れるようにする必要がある。このため、事業者は、労働者の健康の保持増進を図るための基本的な
   計画(以下「健康保持増進計画」という。)を策定するように努めることが必要である。
    健康保持増進計画の策定に当たっては、事業者自らが事業場における健康保持増進を積極的に支
   援することを表明するとともに、衛生委員会等の活用等も含め、その実施体制を確立する必要があ
   る。
    健康保持増進計画の実施においては、実施状況等を適切に評価し、評価結果に基づき必要な改善
   を行うことにより、健康保持増進の一層の充実・向上に努めることが必要である。
    健康保持増進計画で定める事項は、次のとおりである。
   ① 事業者が健康保持増進を積極的に推進する旨の表明に関すること。
   ② 健康保持増進計画の目標の設定に関すること。
   ③ 事業場内健康保持増進体制の整備に関すること。
   ④ 労働者に対する健康測定、運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導、保健指導等健康保持増
    進措置の実施に関すること。
   ⑤ 健康保持増進措置を講ずるために必要な人材の確保並びに施設及び設備の整備に関すること。
   ⑥ 健康保持増進計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること。
   ⑦ その他労働者の健康の保持増進に必要な措置に関すること。
  ロ 事業者は、健康保持増進計画の策定に当たっては、衛生委員会等に付議するとともに、事業場内
   の健康保持増進計画の策定等、労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策(以下
   「健康保持増進対策」という。)を推進するためのスタッフ(3(2)を参照)の意見を聴くための機会
   を設けるよう努めることが望ましい。
 (2) 事業場内健康保持増進対策の推進体制の確立
   事業者は、事業場内の健康保持増進対策を推進する体制を確立するため、次に掲げる組織、スタッ
  フ等を活用、整備するように努めることが必要である。
   なお、本指針においては、望ましい体制を示したものであり、事業場の状況に応じて対応困難な部
  分がある場合には、事業者は、対応可能な部分から体制の整備に努めることが重要である。
  イ 衛生委員会等
   (イ) 事業場において、衛生管理者、衛生推進者等から健康保持増進計画の総括的推進担当者(以下
    「推進担当者」という。)を選任し、健康保持増進計画の継続的な推進を行わせること。
   (ロ) 常時50人以上の労働者を使用する事業場においては、衛生委員会又は安全衛生委員会におい
    て、健康保持増進対策を積極的に調査審議すること。
     その際、産業医等健康保持増進措置を実施するスタッフの意見を十分取り入れる体制を整備す
     ること。
   (ハ) 常時50人未満の労働者を使用する事業場においても、衛生に関する事項について関係労働者
    の意見を聴く際には、健康保持増進対策に関しても意見を求めるように努めること。
  ロ 健康保持増進措置を実施するスタッフ
   (イ) 事業場における健康保持増進措置を実施するに当たっての必要なスタッフの種類とその役割
    は、次のとおりである。
    ① 産業医健康測定を実施し、その結果に基づいて個人ごとの指導票を作成する。さらに、当該
     個人指導票により、健康保持増進措置を実施する他のスタッフに対して指導を行う。
    ② 運動指導担当者健康測定の結果に基づき、個々の労働者に対して具体的な運動プログラムを
     作成し、運動実践を行うに当たっての指導を行う。また、自ら又は運動実践担当者に指示し、
     当該プログラムに基づく運動実践の指導援助を行う。
    ③ 運動実践担当者運動プログラムに基づき、運動指導担当者の指示のもとに個々の労働者に対
     する運動実践の指導援助を行う。
    ④ 心理相談担当者健康測定の結果に基づき、メンタルヘルスケアが必要と判断された場合又は
     問診の際に労働者自身が希望する場合に、産業医の指示のもとにメンタルヘルスケアを行う。
    ⑤ 産業栄養指導担当者健康測定の結果に基づき、必要に応じて栄養指導を行う。
    ⑥ 産業保健指導担当者健康測定の結果に基づき、必要な保健指導を行う。
   (ロ) これらのスタッフは、それぞれの専門分野における十分な知識・技能を有していることが必要
    であると同時に、労働衛生、労働生理などについての知識を有していることが不可欠である。こ
    のため、事業者は、別表に定める研修を受講させこれらのスタッフの養成に努める必要があるが、
    これらのスタッフは、一定の要件の下、兼任することも可能である。
     また、これらのスタッフすべてを養成することが困難な事業者にあっても、計画的・段階的に
    養成を行うことが望ましい。なお、事業者は、これらのスタッフに対して、上記研修修了後にお
    いても、それぞれの専門分野に適した資質の向上のための研修に参加させるように努めることが
    望ましい。
  ハ 健康保持増進専門委員会
   (イ) 上記ロの健康保持増進措置を実施するスタッフを選任している事業場は、当該スタッフ及び
    推進担当者を構成員として、産業医を長とする「健康保持増進専門委員会」を設置することが
    望ましい。
   (ロ) 「健康保持増進専門委員会」では、個々の労働者に対する健康保持増進措置に関して専門技
    術的立場から検討及び評価を行い、個々の労働者に対する各種指導の具体的かつ適切な実施に
    役立てるものとする。
  ニ 事業場における健康保持増進対策の実施体制
   (イ) 衛生委員会等で策定された健康保持増進計画を実行していくために、事業場における健康保
    持増進対策の実施担当部門を明確にし、推進担当者、衛生委員会等との緊密な連携のもとに、
    各職場を含めた健康保持増進対策の実施体制を確立することが重要である。
   (ロ) 各職場においては、小集団活動体制の活用等労働者の健康保持増進対策の実効ある普及、定
    着が図られるよう創意工夫を行い、協力体制を整えることが望ましい。
 (3) 労働者健康保持増進サービス機関等の利用
  イ 3(2)ロで記した健康保持増進措置を実施するためのスタッフは原則的には事業場内に配置される
   べきものである。しかし、事業者がこれらのスタッフすべてを確保することが困難な場合には、事
   業者が行うべき健康測定、運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導及び保健指導について、①健
   康測定、②運動プログラム作成及び指導、③運動実践指導、④メンタルヘルスケア、⑤栄養指導、
   ⑥保健指導のすべてを実施することが可能である労働者健康保持増進サービス機関(事業者の委託
   を受けて、労働者の健康の保持増進のための業務を行う機関をいう。以下同じ。)などに委託して
   実施することが適当である。
  ロ 事業場内に3(2)ロで記した健康保持増進措置を実施するスタッフのうち運動指導に関するスタッ
   フのみが不足していること等により、運動指導を行うことが困難なときは、当該事業場の産業医と
   連携を取りながら運動指導を行うことが可能である企業外の運動指導専門機関に委託して実施する
   ことが適当である。
  ハ 労働者健康保持増進サービス機関又は運動指導専門機関(以下「労働者健康保持増進サービス機
   関等」という。)を利用する場合、健康保持増進計画の策定に当たっては、事業者は当該労働者健
   康保持増進サービス機関等の各専門スタッフの意見を聴くための機会を設けるよう努めることが望
   ましい。
    また、この場合、事業者は、3(2)ハに記した健康保持増進専門委員会を開催する際には、事前に
   調整した上、労働者健康保持増進サービス機関等の各専門スタッフの出席を求めること、又は産業
   医若しくは推進担当者が労働者健康保持増進サービス機関等と十分な連携をとることで健康保持増
   進専門委員会の機能を代替させることが望ましい。
 (4) 健康保持増進対策の実施結果の評価
   事業者は、事業場における健康保持増進対策を、継続的かつ計画的に推進していくためには、当該
  対策の実施結果を定期的に、総合的かつ個別的に評価するとともに、当該評価のための各種資料を作
  成し、新たな健康保持増進計画に反映させる等健康保持増進対策の内容を充実するように努めること
  が必要である。
 (5) その他
  イ 秘密の保持
    健康保持増進措置の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の心身の健康
   に関する情報その他の秘密を他に漏らしてはならない。
  ロ 記録の保存
    事業者は、事業場における健康保持増進対策を継続的かつ計画的に推進していくために、健康保
   持増進措置の実施の事務に従事した者の中から、担当者を指名し、当該担当者に健康測定の結果、
   運動指導の内容等健康保持増進措置に関する記録を保存させることが必要である。

4 健康保持増進措置の内容
  健康保持増進措置には健康教育、健康相談等があり、これらの中には労働者に対する集団指導や個々
 の労働者に対する健康指導が含まれる。事業者は、次に掲げる健康保持増進措置の具体的項目について
 実施し、その結果に基づき健康教育や個々の労働者に応じたきめ細かな対策を実施するとともに、労働
 者の個別の要請に応じて健康相談等を行うように努めることが必要である。
 (1) 健康測定
   労働者の健康保持増進対策を推進していくためには、各個人が自己の健康状態について正確な知識
  をもち、産業医を中心とするスタッフの指導を受けながら健康管理を継続していくことが必要である。
   「健康測定」とは、それぞれの労働者の健康状態を把握し、その結果に基づいた運動指導、メンタ
  ルヘルスケア、栄養指導、保健指導等の健康指導を行うために実施される生活状況調査や医学的検査
  等のことをいい、疾病の早期発見に重点をおいた健康診断とはその目的が異なるものである。なお、
  健康測定は、原則として産業医が中心となって行い、その結果に基づき各労働者の健康状態に応じた
  指導票を作成し、その指導票に基づいて、運動指導、保健指導等が行われるものであるが、第一段階
  として産業医が中心となって労働者自身の健康認識に応じた健康づくりに関する全般的な指導を行い、
  これをもとに必要があれば第二段階として運動指導、保健指導等必要な健康指導を実施することも可
  能である。
   なお、健康指導の実施に当たっては、事業場の状況に応じ、必要な指導のみを実施することも可能
  である。
   また、指導内容が複数の労働者に共通する場合は、当該共通部分について個別指導ではなく複数の
  労働者に対し斉一に指導することも可能である。
  イ 健康測定の実施及びその項目
    各種の健康指導を継続的かつ計画的に行うため、各労働者に対し定期的に健康測定を実施する。
    健康測定の項目は、問診、生活状況調査、診察及び医学的検査であり、必要に応じて運動機能検
   査も行うものとする。また、問診、診察及び医学的検査の一部について、労働安全衛生法第66条第
   1項の規定に基づく健康診断をもって代替することや問診の一部について、労働安全衛生法第66条
   の10の規定に基づく心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)
   の結果を利用することも可能であるが、これらを利用する場合には労働者本人の同意が必要である。
    なお、メンタルヘルスケアにつなげるために健康測定として労働者のストレスを調査する場合は、
   ストレスの有無について二者択一により調べる方法等簡易な方法によるものとし、調査票を用いて、
   ストレスの原因、自覚症状及び他の労働者による支援に関する項目により検査を行い、ストレスの
   程度を点数化して評価を行うストレスチェックを行うものではないことに特に留意すること。
  ロ 指導票の作成
    産業医は、健康測定の実施結果を評価し、運動指導等の健康指導を行うための指導票を作成し、
   健康保持増進措置を実施する他のスタッフに対して指導を行う。
 (2) 運動指導健康測定の結果及び産業医の指導票に基づいて、運動指導担当者が労働者個人個人につ
  いて、実行可能な運動プログラムを作成し、運動実践を行うに当たっての指導を行う。また、運動
  指導担当者及び運動実践担当者が、当該プログラムに基づく運動実践の指導援助を行う。
   その際、労働者個人個人が自主的、積極的に取り組むよう配慮することが必要である。
  イ 運動プログラムの作成運動プログラムの作成に当たっては、個人の生活状況、趣味、希望等が十
   分に考慮され、運動の種類及び内容が安全に楽しくかつ効果的に実践できるものであるよう配慮す
   ることが重要である。
  ロ 運動実践の指導援助運動実践の指導援助に当たっては、個人の健康状態に合った適切な運動を職
   場生活を通して定着させ、健康的な生活習慣を確立することができるよう配慮することが重要であ
   る。
 (3) メンタルヘルスケア
   健康測定の結果、メンタルヘルスケアが必要と判断された場合又は問診の際労働者自身が希望する
  場合には、心理相談担当者が産業医の指示のもとにメンタルヘルスケアを行う。
   なお、本指針の「メンタルヘルスケア」とは、積極的な健康づくりを目指す人を対象にしたもので
  あって、その内容は、ストレスに対する気付きへの援助、リラクセーションの指導等である。このた
  め、ストレスチェック結果に基づき事業者が講ずべき措置とは趣旨及び内容が異なるものであること
  に特に留意すること。
 (4) 栄養指導
   健康測定の結果、食生活上問題が認められた労働者に対して、産業栄養指導担当者が、健康測定の
  結果及び産業医の指導票に基づいて、栄養の摂取量にとどまらず、労働者個人個人の食習慣や食行動
  の評価とその改善に向けて指導を行う。
 (5) 保健指導
   勤務形態や生活習慣からくる健康上の問題を解決するために、産業保健指導担当者が、健康測定の
  結果及び産業医の指導票に基づいて、睡眠、喫煙、飲酒、口腔保健等の健康的な生活への指導及び教
  育を、職場生活を通して行う。

5 個人情報の保護への配慮健康情報を含む労働者の個人情報の保護に関しては、個人情報の保護に関す
 る法律(平成15年法律第57号)及び関連する指針等が定められており、個人情報を事業の用に供する個
 人情報取扱事業者に対して、個人情報の利用目的の公表や通知、目的外の取扱いの制限、安全管理措置、
 第三者提供の制限などを義務づけている。また、個人情報取扱事業者以外の事業者であって健康情報を
 取り扱う者は、健康情報が特に適正な取扱いの厳格な実施を確保すべきものであることに十分留意し、
 その適正な取扱いの確保に努めることとされている。事業者は、これらの法令等を遵守し、労働者の健
 康情報の適正な取扱いを図るものとする。
  また、健康測定等健康保持増進の取組において、その実施の事務に従事した者が、労働者から取得し
 た健康情報を利用するに当たっては、当該労働者の健康保持増進のために必要な範囲を超えて利用して
 はならないことに留意すること。事業者を含む第三者が、労働者本人の同意を得て健康情報を取得した
 場合であっても、これと同様であること。