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東日本大震災の復旧工事における船舶の解体等作業に係る労働災害防止対策の徹底について

基安発0812第2号
平成23年8月12日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局
安全衛生部長

東日本大震災の復旧工事における船舶の解体等作業に係る労働災害防止対策の徹底について

 東日本大震災により、津波によって多数の船舶が陸地に打ち上げられ、これらの船舶の解体・改修作業
(以下「解体等作業」という。)が行われることが予想されたことから、平成23年5月10日付け基安発0510
第1号及び同第2号「東日本大震災の復旧工事における船舶の解体等作業に係る労働災害防止対策の徹底に
ついて」をもって労働災害防止対策の徹底を図ってきたところである。
 特に、その対策の中でも重要な課題である石綿ばく露の防止については、石綿障害予防規則の一部を改
正省令(平成23年厚生労働省令第83号)が平成23年7月1日に公布され、同年8月1日から施行されたことによ
り、船舶の解体等作業においても、建築物等の解体等作業と同等の措置をとることとされ、平成23年7月
28日付け基発0728第6号「石綿障害予防規則の一部を改正する省令の施行について」により、その施行に
遺漏なきようお願いしているところ、今般、これまでに通知してきた船舶の解体等作業における労働災害
防止に関する実施事項を網羅的に下記に取りまとめたので、指導に当たり遺漏なきを期されたい。
 また、関係、事業者団体等に対し、別添のとおり、船舶の解体等作業に係る労働災害防止対策の徹底に
ついて要請したところであるので、申し添える。
 なお、上記の平成23年5月10日付け基安発0510第1号及び同第2号は、本通達をもって廃止する。
第1 労働災害防止に関する実施事項
 1 作業準備段階において、危険性又は有害性等の調査を実施し、その結果に基づく措置を実施するこ
  と。(労働安全衛生法(以下「安衛法」という。)第28条の2)
 2 高所での作業に労働者を従事させる場合
  (1) 高さが2メートル以上の箇所で作業を行う場合において、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれ
   のあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けること。(労働安全衛生規則(以下
   「安衛則」という。)第518条)
  (2) 足場を設置する場合には、適切な墜落防止措置及び物体の落下防止措置を講ずること。(安衛則第
   563条第565条第566条)
  (3) つり足場、張り出し足場又は高さが5メートル以上の構造の足場の組立て、解体又は変更の作業を
   行う場合は、足場の組立て等作業主任者を選任し、職務を遂行させるとともに、労働者の墜落によ
   る危険を防止するための措置を講ずること。(安衛則第564条第565条第566条)
  (4) 足場の高さが5メートル未満である等足場の組立て等作業主任者の選任を要しない場合であって、
   墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、作業を指揮する者を指名して、その者に直
   接作業を指揮させるとともに、あらかじめ作業の方法及び順序を労働者に周知させること。(安衛則
   第529条)
 3 重機等を用いた作業に労働者を従事させる場合
  (1) 地震や津波の影響により地盤が緩んでいる等不安定な場所において作業を行う場合には、敷鉄板
   の敷設等により、移動式クレーン等の転倒防止を図ること。(クレーン等安全規則(以下「クレーン
   則」という。)第66条の2第70条の3第70条の4第70条の5等)
  (2) 移動式クレーンの運転については、運転士免許を受けた者、技能講習を修了した者等必要な資格
   を有する者に行わせること。(クレーン則第67条第68条)
 4 爆発又は火災の危険がある作業に労働者を従事させる場合
  (1) 多量の易燃性の物又は危険物が存在して爆発又は火災の危険がある船体に近接した場所において
   は、アーク溶接機等火花、アークを発する等により点火源となるおそれのある機械等又は火気を使
   用しないこと。 (安衛則第279条)
  (2) 重油、潤滑油等危険物以外の引火性の油類や危険物が存在するおそれのある船体部分については、
   あらかじめ、引火性の油類や危険物を除去する等爆発又は火災の防止のための措置を講じた後でな
   ければ、溶接、溶断その他火気を使用する作業や火花を発するおそれのある作業をさせないこと。
   (安衛則第285条)
  (3) 爆発又は火災の危険がある場所には、火気の使用を禁止する旨の適当な表示をし、特に危険な場
   所には、必要でない者の立入りを禁止すること。(安衛則第288条)
  (4) 喫煙所その他火気を使用する場所には、火災予防上必要な設備を設けるとともに、火気を使用し
   た者には確実に残火の始末をさせること。(安衛則第291条)
  (5) 溶断等の作業に当たる場合は、作業を開始するとき及び当該作業中断時、作業箇所及びその周辺
   における引火性の物の蒸気又は可燃性ガスの濃度を測定すること。(安衛則第328条の3)
 5 船室等の密閉された空間に入る場合には、一時的に酸素が欠乏している可能性があることから、あら
  かじめ酸素濃度を測定し、必要に応じて換気を行う、又は空気呼吸器等を使用すること。(酸素欠乏症
  等防止規則第3条第5条第5条の2)
 6 1から5までの安衛法に基づく事項に加え、次の(1)から(3)の事項について、その適切な実施を図る
  こと。
  (1) 作業の方法及び順序等が示された作業計画を作成し、その作業計画に従って作業を行うこと。
  (2) 陸地に打ち上げられた船舶を移動させずにその場で解体等作業を行う場合には、作業中に当該船
   舶が横転等しないよう、適切に固定してから作業を開始すること。
  (3) 夏場の解体等作業においては、熱中症を発症するおそれがあることから、平成21年6月19日付け基
   発第0619001号「職場における熱中症の予防について」に基づく熱中症予防対策を講ずること。

第2 石綿関連作業に関する実施事項
 1 全ての船舶の解体等作業に係る事項
   全ての船舶の解体等作業においては次を行うこと。
  (1) 石綿等を取り扱う作業の場合
   ア 石綿作業主任者技能講習を修了した者のうちから、石綿作業主任者を選任し、その者に次の事
    項を行わせること。(石綿障害予防規則(以下「石綿則」という。)第19条及び第20条)
    (ア) 作業に従事する労働者が石綿等の粉じんにより汚染され、又はこれらを吸入しないように、
     作業の方法を決定し、労働者を指揮すること。
    (イ) 保護具の使用状況を監視すること。
   イ 石綿等の粉じんを吸入することによる労働者の健康障害を予防するため、同時に就業する労働
    者の人数と同数以上の呼吸用保護具を備え、常時有効かつ清潔に保持すること。(石綿則第44条及
    び第45条)
   ウ 作業場には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示す
    ること。(石綿則第15条)
   エ 洗限、洗身又はうがいの設備、更衣設備及び洗濯のための設備を設けること。(石綿則第31条)
   オ 作業に使用した器具、工具、足場等について、付着した物を除去した後でなければ作業場外に
    持ち出してはならないこと。(廃棄のため容器等に梱包したものを除く。) (石綿則第32条の2)
   カ 作業場では労働者が禁煙し、又は飲食することを禁止し、かつ、その旨を当該作業場の見やす
    い箇所に表示しなければならないこと。(石綿則第33条)
   キ 作業場には、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意事項及び使用すベき保護具について、作業に
    従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければならないこと。(石綿則第34条)
  (2) 石綿等の切断、穿孔、研磨等の作業、石綿等を塗布し、注入し、又は張り付けた物の解体等の作
   業がある場合
   ア 労働者に呼吸用保護具を使用させること。(石綿則第14条)
   イ 散水等により、石綿等を湿潤な状態のものとすること。(湿潤化が著しく困難な場合を除く。)
    (石綿則第13条)
  (3) 石綿等を常時取り扱う作業に労働者を従事させる場合
   ア 当該作業場以外の場所に休憩室を設置すること。(石綿則第28条)
   イ アで設置した休憩室の床等については、水洗する等粉じんの飛散しない方法によって、毎日一
     回以上、掃除を行うこと。(石綿則第30条)
   ウ 1月を超えない期間ごとに作業の記録を作成し40年間保存すること。(石綿則第36条)
   エ 労働者に対し石綿健康診断を実施し、その記録を作成し40年間保存すること。(石綿則第41条)
 2 銅製の船舶の解体等作業に係る事項
   鋼製の船舶の解体等作業を行う場合、1に加え、次の事項を行うこと。なお、(1)から(8)までの石綿
  則に基づく措置に加え、(9) 及び(10)についてその適切な実施を図るとともに、(11) に留意すること。
  (1) 事前調査
    石綿等の使用の有無の調査結果を記録するとともに、調査の結果を作業に従事する労働者が見や
   すい場所に掲示すること。(石綿則第3条)
  (2) 作業計画の作成
    (1) の結果、石綿等が使用されている場合、石綿等による労働者の健康障害を防止するため、あ
   らかじめ、作業計画を定め、当該作業計画により作業を行うこと。(石綿則第4条)
  (3) 特別教育
    作業に就かせる労働者に対し、当該業務に関する特別教育を実施すること。(石綿則第27条)
  (4) 作業内容の届出
    次のアからウのいずれかの作業に該当する場合は、あらかじめ、石綿則様式第1号に規定する内容
   及び当該作業に係る船舶の概要を示す図面を、当該事業場の所在地(解体現場)を管轄する労働基準監
   督署長に届け出ること。なお、図面については、船舶の形状と作業を行う場所等を示した簡易なもの
   で差し支えないこと。(石綿則第5条)
   ア 吹き付けられた石綿等の除去作業
   イ 保温材、耐火被覆材、断熱材の除去作業
   ウ 吹き付けられた石綿等が損傷劣化等により粉じんを発散させ、及び労働者がその粉じんにばく露
    するおそれがある場合の封じ込め、固い込みの作業
  (5) 隔離等
    次のアからウの作業を行う場合の作業場所については、それ以外の作業を行う場所から隔離、集
   じん・排気装置の設置、負圧化、前室設置等(以下「隔離等Jという。)の措置を講ずること。ただし、
   当該措置と同等以上の効果を有する措置を講じたときは、この限りではないこと。(石綿則第6条)
   ア (4) のアの作業
   イ (4) のイの作業のうち、石綿等の切断等を伴う作業
   ウ (4) のウの作業(ただし、囲い込みの作業にあっては、石綿等の切断等の作業を伴う作業)
  (6) 電動ファン付き呼吸用保護具等の使用
    船舶内において、上記(5)により隔離を行った作業場所で、吹き付けられた石綿等を除去するに当
   たっては、労働者に電動ファン付き呼吸用保護具又はこれと同等以上の性能を有する送気マスク等
   を使用させること。(石綿則第14条)
  (7) 作業者以外の立入禁止等
    石綿等を切断等しない場合であっても、作業を行う労働者以外の者が作業場所に立ち入ることを
   禁止し、かつ、その旨を労働者及び周囲の住民に分かりやすい場所に掲示すること。(石綿則第7条)
  (8) 吹き付けられた石綿等が損傷・劣化等している場合の措置
    吹き付けられた石綿等の損傷・劣化等により、船舶で就業する労働者が石綿等にばく露するおそれ
   がある場合、除去、封じ込め等を行うこと。また、吹き付けられた石綿等の損傷・劣化等により、
   臨時に就業する労働者が石綿等にばく露するおそれがある場合、当該労働者に呼吸用保護具及び作業
   衣又は保護衣を使用させること。(石綿則第10条)
  (9) 石綿含有断熱材が使用されている配管や機械類からの石綿等の適切な除去
   ア 船舶の解体等における石綿等の除去については、船舶の内部が狭隆であること、石綿を含む断
    熱材等(以下「石綿断熱材等」という。)が使われている配管や機械類(以下「配管等」という。)
    の形状が特異であることから、通常の除去作業が困難となる可能性がある。その場合には、船舶
    の内部でこれら配管等から石綿断熱材等を除去することは避け、これら配管等そのものを、グロ
    ーブバッグ、ビニール、テープ等を用いて覆った上で外し、又は石綿断熱材等が使われている部
    分を周囲から切断すること。その際、適切な保護具を使用すること。
   イ 具体的な方法としては、(参考図)のように、配管エルボ(配管の曲線部)のみが石綿断熱材等で
    覆われている配管について、石綿断熱材等で覆われていない直線部分を切断して石綿断熱材等を
    配管エルボごと取り外した上で、専門工場で当該配管から石綿断熱材等を除去する作業があるこ
    と。
   ウ 上記ア及びイに示す作業については、次の(ア)及び(イ)のとおりとすること。
    (ア) 当該作業は、船舶の解体等の作業場所においては、配管等からの石綿断熱材等の除去は行わ
     ないものの、船舶から石綿断熱材等を取り除くことには相違なく、石綿則第5条第1項第1号に掲
     げる「除去」の作業に当たることとなること。このため、当該作業を行う事業者は、石綿則第5
     条に基づく作業の届出その他必要な措置を講じなければならないものであること。
    (イ) 船舶から取り外された配管等について、船舶以外の場所で石綿断熱材等を当該配管等から除
     去する作業は、船舶の解体等の作業には該当しないものであることから、石綿則第5条の作業の
     届出は要しないが、当該作業は石綿等の取扱い作業に該当するため、屋内作業場の場合には石
     綿則第12条に基づく局所排気装置の設置等その他必要な措置を講じなければならないものであ
     ること。

   (参考図)
図 配管エルボの事例
 
  (10) 集じん・排気装置の保守点検
    次のアからウまでに掲げる集じん・排気装置の保守点検の徹底を図ること。なお、必要に応じて
   (11) の「船舶における適正なアスベストの取扱いに関するマニュアル (財団法人日本船舶技術研
   究協会)又は「建築物等の解体等工事における石綿粉じんへのばく露防止マニュアル」(建設業労
   働災害防止協会)を参考にすること。
   ア 集じん・排気装置の取扱説明書等に基づき、フィルターの目詰まりによる劣化を防止するため、
    フィルターの定期的な交換を徹底すること。
   イ 集じん・排気装置のパッキンの取付け等の不具合による石綿の漏洩を防止するため、使用開始
    前の取付け状態の確認を徹底すること。
   ウ その他、集じん装置等の定期自主点検指針に示された事項の確認を徹底すること。
  (11) 「船舶における適正なアスベストの取扱いに関するマニュアル」について
    船舶の解体等における石綿等の除去等に当たっては、必要に応じ、財団法人日本船舶技術研究協
   会において作成した「船舶における適正なアスベストの取扱いに関するマニュアル2011年3月」を
   参考にすること。(本マニュアルは同協会ホームページ(http://www.jstra.jp/html/a04/cat100/
   平成23年8月現在)上に公開されている。)