労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び石綿障害予防規則等の一部を改正する省令の施行等について

基発0528第1号
平成30年5月28日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長

労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び石綿障害予防規則等の一部を改正する省令の施行等について

 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(平成30年政令第156号。以下「改正政令」という。)及び
石綿障害予防規則等の一部を改正する省令(平成30年厚生労働省令第59号。以下「改正省令」という。)が
平成30年4月6日に公布され、平成30年6月1日から施行されるところであるが、その改正の趣旨、内容等に
ついては、下記のとおりであるので、その施行に遺漏なきを期されたい。
 併せて、本通達については、別添のとおり、関係事業者等団体の長宛て関係者への周知等を依頼したの
で了知されたい。
第1 改正の概要
   過去に石綿建材を使用して建築した建築物等の解体作業については、今後、さらに増加していくこ
  とが見込まれている。解体等作業における労働者の石綿ばく露防止のためには、建築物等における石
  綿の使用状況を的確に調査できることが必要であるが、調査のための分析や調査を行う者の教育に用
  いる石綿について、将来にわたって安定的に確保することは困難な状況にあると考えられる。
   改正政令やそれに伴う改正省令の内容は、こうした状況を踏まえ、
  ・石綿の分析のための試料の用に供される石綿
  ・石綿の使用状況の調査に関する知識又は技能の習得のための教育の用に供される石綿
  の製造等を可能とし、石綿の分析の精度の向上及び石綿の調査を行う者の能力の向上を図り、もって
  労働者の石綿による健康障害の防止を図るためのものである。
   その他、国が専門家を参集して行った「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」
  における検討結果を踏まえ、石綿の分析の作業について局所排気装置等の排気口を屋内に設けること
  を可能とする等、所要の改正を行ったものである。

第2 改正の内容
 1 改正政令関係
  (1) 安衛令の一部改正(改正政令第1条関係)
   ア 石綿分析用試料等を製造等禁止物質から除外するとともに、他の規定との均衡を考慮し、労働
    安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第56条第1項に基づく製造許可の対象と
    したものであること。(労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「安衛令」という。)
    第16条及び第17条関係)
   イ その他所要の改正を行ったものであること。
 2 改正省令関係
  (1) 石綿則の一部改正(改正省令第1条関係)
   ア 石綿分析用試料等の定義(石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」と
    いう。)第2条関係)
     安衛令第6条第23号において新たに「石綿分析用試料等」が定義されたところ、改正省令によ
    る改正により石綿則中に多く「石綿分析用試料等」を規定することとなるため、「石綿分析用試
    料等」の定義を置いたものであること。
   イ 石綿分析用試料等の製造作業に係る措置(石綿則第15条第28条第29条第31条第32条の2
    から第35条まで、第40条第44条及び第49条関係)
     石綿分析用試料等の製造が可能となることに伴い、石綿分析用試料等を製造する作業場・作業
    等について、石綿則に規定する各措置の対象に追加したものであること。
   ウ 製造許可の単位(石綿則第48条の2関係)
     石綿分析用試料等の国内需要を踏まえると、特定化学物質の第一類物質と異なり、複数のプラ
    ントでの製造は想定しづらいが、法第56条第1項に基づく許可であることを踏まえ、これまで同
    条に基づく許可の対象とされている物質と同様、許可はプラントごとに行うものとしたこと。
   エ 製造許可の手続き(石綿則第48条の3関係)
     法第56条第1項に基づく許可であることを踏まえ、同条に基づく特定化学物質障害予防規則(昭
    和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)第49条の許可の手続きと同様の手続きを定め
    たものであること。
   オ 製造許可の基準(石綿則第48条の4関係)
     石綿分析用試料等の需要を踏まえると、大規模な生産は想定しづらいことから、石綿分析用試
    料等の製造に関する法第56条第2項の厚生労働大臣の定める基準については石綿則第48条の規定
    を準用することとしたこと。
   カ 石綿分析用試料等の製造・輸入・使用の届出(石綿則様式第3号の2関係)
     石綿分析用試料等として法第55条の適用されない物を特定する観点から記載事項を定めたもの
    であること。
   キ 石綿分析用試料等の製造許可証及び再交付等申請書(石綿則様式第5号の3及び様式第5号の4関
    係)
     法第56条第1項に基づく手続きであることを踏まえ、同条に基づく既存の許可様式(特化則様式
    第7号及び第8号)と同様の様式を定めたものであること。
  (2) 安衛則等の一部改正(改正省令第2条から第5条まで関係)
   ア 改正後の石綿則第48条の3第1項の規定の申請をした者が行う石綿発散抑制設備の設置について
    は、特化則第49条第1項と同様に、法第88条第1項の規定による設置の計画の届出は要しないこと
    とし、あわせて、石綿則第47条第1項の規定による申請についても、石綿則様式第4号の改正を行
    い、法第88条第1項の規定による設置の計画届は要しないこととしたこと。(労働安全衛生規則(昭
    和47年厚生労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第86条第3項関係)
   イ GHS(化学品の分類及び表示に関する世界調和システム)に基づく分類を踏まえ、石綿を含有す
    る製剤その他の物に係る裾切値(当該物質の含有量がその値未満の場合、名称等の表示義務等の
    対象としない)を設定したものであること。(安衛則別表第2関係)
 3 施行日及び経過措置等
  (1) 施行期日及び経過措置(改正政令附則第1項及び第2項並びに改正省令附則第1項及び第2項関係)
   改正政令及び改正省令の施行期日は、平成30年6月1日としたこと。ただし、改正政令及び改正省令
  の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例によるとしたこと。
  (2) 平成18年政令第257号の一部改正(改正政令附則第3項関係)
   労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(平成18年政令第257号)附則第2条第3項は既に効力の
  ない規定であるため、これを削除する等、所要の改正を行ったものであること。
  (3) その他
   改正政令の施行に伴い、平成30年厚生労働省告示第213号(作業環境測定基準の一部を改正する告示)
  が平成30年4月20日に公示され、平成30年6月1日から適用することとされたこと。

第3 細部事項
 1 改正政令関係
  (1) 石綿分析用試料等の製造等禁止物質からの除外(安衛令第16条第1項第4号関係)
  ア 同号イの「分析」とは、建材分析その他の石綿の分析が含まれること。
   「石綿の分析のための試料の用に供される」ものとは、X線回折装置による分析の際に用いる標準
   試料のほか、石綿分析機関の品質保証・品質比較や個人の技能評価のための試料、顕微鏡観察の際
   の参照用試料が含まれること。
  イ 同号ロの「調査」とは、分析による調査が含まれるものであること。
  ウ 同号ロの「教育の用」とは、透明の包装に梱包された石綿等を観察するようなことだけでなく、
   例えば建材の断面をほぐして繊維の有無を観察するような実技の用が含まれること。なお、石綿除
   去作業の教育の用に供する石綿等については、その必要性を勘案し、禁止対象からの除外は行わな
   かったものであること。また、石綿を含有しない模擬の試料により教育の目的が達せられる場合に
   は、できる限り、石綿等の使用を避けるべきであること。
 2 改正省令関係
  (1) 石綿障害予防規則の一部改正(改正省令第1条関係)
  ア 石綿の分析の作業における局所排気装置等の排気口に係る要件(石綿則第16条関係)
    第1項及び第2項の「石綿の分析の作業」とは、石綿の分析に際して行う、秤量、顕微鏡観察、試
   料調整や粉砕の作業が挙げられること。なお、石綿小体に係る病理検査やプレパラートを顕微鏡観
   察する作業など石綿粉じんの発散しない作業については石綿則第12条の適用がないこと。
    第1項及び第2項の「排気口からの石綿等の粉じんの排出を防止するための措置」とは、国が専門
   家を参集して行った「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」における検討結果
   を受け、次の(ア)及び(イ)のいずれも満たすものとして取り扱うこと。
   (ア)除じん装置は、ろ過方式とし、HEPAフィルターなど捕集効率が99.97%以上のろ過材を使用する
   こと
   (イ)正常に除じんできていることを確認するため次のすべての措置を講じること
   ・局所排気装置等の設置時・移転時やフィルターの交換時には、除じん装置が適切に粉じんを捕集
    することを確認すること。確認の方法としては、例えば、①微粒子計測器(いわゆるパーティク
    ルカウンター)により排気の粒子濃度を室内のバックグラウンドと比較すること、又は②スモー
    クテスターをたいて排気口で粉じんが検出されないことを粉じん相対濃度計(いわゆるデジタル
    粉じん計)若しくは微粒子計測器により確認することが挙げられること。
   ・除じん装置を1月以内ごとに1回点検すること。点検の主な内容としては、除じん装置の主要部分
    の損傷、脱落、異常音等の異常の有無、除じん効果の確認等があること。除じん効果の確認方法
    については、上記の設置時等における粉じんの捕集の確認方法があること。
   ・石綿分析作業中に、除じん装置の排気口において、半年以内ごとに1回、総繊維数濃度の測定を
    行い、排気口において総繊維数濃度が管理濃度の10分の1を上回らないことを確認すること。そ
    の際、測定は、ろ過捕集方式及び計数方法によること。なお、繊維数の計数は技術等を要するた
    め、十分な経験及び必要な能力を有する者が行うことが望ましいこと。
   ・これらの確認・点検で問題が認められた場合は、直ちに補修・フィルターの交換等の必要な改善
    措置を講じること。
  イ 禁止が適用されない石綿分析用試料等の要件(石綿則第46条の2関係)
    「堅固な容器」や「確実な包装」とは、必要に応じて、運搬時の衝撃や摩耗に耐えうるよう、容
   器の周囲に緩衝材を配置し、包装を二重とする等、運搬形態に応じた必要な措置を講じたものをい
   うものであること。
    なお、石綿調査の講習を実施する機関が当該講習のために石綿建材のサンプルを受講者に提供し
   ようとする場合(所有権を留保しながら利用させるような場合)において、本規定は、講習で配布す
   る際に容器・包装の措置を講じることを求める趣旨であり、受講者がルーペ等で観察を行うような
   実技演習時にまで容器・包装の措置を講じていなければならない趣旨ではないこと。
  ウ 石綿分析用試料等の製造・輸入・使用の届出(石綿則様式第3号の2関係)
    備考4の「保管方法」として、石綿則第32条の措置に加えて、保管棚を施錠し、石綿分析用試料
   等であることを表示して他の物と区別して保管することが望ましいこと。
  エ 石綿等の製造・輸入・使用の許可申請書の改正(石綿則様式第4号関係)
    輸入の申請時に輸入する便等が決まっている場合において当該便等を特定しやすくする観点から、
   また、労働安全衛生規則第86条の改正とあわせ、別紙1の新旧対照表の通り改正を行ったものであ
   ること。
  オ 石綿分析用試料等の製造許可申請書(石綿則様式第5号の2関係)
    法第56条に基づく許可であることを踏まえ、「従事労働者数」欄及び「生産計画」欄については、
   特化則様式第6号の相当する項目と同様の内容を定めたものであること。
    製造許可基準は石綿則第48条を準用したことから、「製造設備等」欄、「保管」欄及び「保護具」
   欄は、同許可に係る石綿則様式第4号の相当する項目と同様の内容を定めたものであること。

第3 関係通達の改正
   次に掲げる通達の一部を別紙2の新旧対照表のとおり改正する。
  ア 昭和47年9月18日付け基発第591号「特定化学物質等障害予防規則の施行について」
  イ 平成18年8月11日付け基発第0811002号「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び石綿障
   害予防規則等の一部を改正する省令の施行等について」
  ウ 平成24年5月9日基発0509第10号「「建築物等の解体等の作業での労働者の石綿ばく露防止に関す
   る技術上の指針」の制定について」




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