「インジウム化合物等を製造し、又は取り扱う作業場において労働者に使用させなければならない呼吸用保護具」の適用について

基発1203第1号
平成24年12月3日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長

「インジウム化合物等を製造し、又は取り扱う作業場において労働者に使用させなければならない呼吸用保護具」の適用について

 労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成24年厚生労働省令第143号。以下「改正省令」という。
)により新たに規定された特定化学物質障害予防規則(以下「特化則」という。)第38条の7第1項第2号の規
定に基づき、「インジウム化合物等を製造し、又は取り扱う作業場において労働者に使用させなければな
らない呼吸用保護具」(平成24年厚生労働省告示第579号。以下「本告示」という。)が本日公示され、平
成25年1月1日から適用することとされたところであるが、その制定の趣旨、内容等については下記のとお
りであるので、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。
1 制定の趣旨
  インジウム化合物等を製造し、又は取り扱う作業においては、インジウム化合物による労働者の健康
 障害を防止するため、インジウム化合物について実施した動物実験の結果から得られた知見に基づき、
 労働者が吸入する空気中のインジウム化合物の濃度をインジウムとして0.3μg/m3以下とする必要があ
 る。このため、本告示では、作業環境測定の結果から得られた値の区分ごとに、労働者が吸入する空気
 中のインジウム化合物の濃度が上記濃度以下となるよう、特化則第38条の7第1項第2号の規定に基づき
 労働者に使用させる呼吸用保護具を規定したものである。具体的には、原則として、日本工業規格(以
 下「JIS」という。)T8150で定める呼吸用保護具の種類ごとの指定防護係数(訓練された着用者が、正
 常に機能する呼吸用保護具を正しく着用した場合に、少なくとも得られるであろうと期待される防護係
 数(呼吸用保護具の外の空気中の有害物質の濃度を着用者の吸気中の濃度で除して得た値をいう。)をい
 う。別添参照。)を基に、0.3μg/m3に当該作業場で使用する呼吸用保護具の防護係数を乗じて得た値を
 インジウム化合物の管理濃度とみなして、当該作業場の作業環境測定の結果について作業環境評価基準
 (昭和63年労働省告示第79号)第2条に規定する方法により評価を行った場合に同条の第一管理区分に該
 当するように、呼吸用保護具の種類を規定したものである。

2 制定の内容
 (1) 本告示第1号の表の下欄に掲げる呼吸用保護具と同等以上の性能を有する呼吸用保護具とは、原則
  として、JIST8150で定める指定防護係数が同欄に掲げる呼吸用保護具と同等以上のものをいうこと。
   ただし、電動ファン付き呼吸用保護具については、技術開発の進展が著しく、JIST8150で定める
  指定防護係数を上回る防護係数が確保できる場合があることから、(2)エ及びオに示す場合には、労
  働者ごとに実際に装着させることにより確認した防護係数を用いることができること。
 (2) 本告示第1号の表の下欄に掲げる呼吸用保護具について、それらの呼吸用保護具と同等以上の性能
  を有するものを含めて示すと、次のものがあること。
  ア 「0.3μg/m3以上3μg/m3未満」の区分に対応する呼吸用保護具は、10以上の防護係数が確保でき
   るものであり、具体的には、①粒子捕集効率が99.9%以上の取替え式防じんマスク、②粒子捕集効
   率が99.97%以上の電動ファン付き呼吸用保護具であって、「電動ファン付き呼吸用保護具の規格」
   (平成26年厚生労働省告示第455号。以下「規格」という。)で定める電動ファンの性能区分が大風
   量形のもの及び③給気式呼吸用保護具、が該当すること。
  イ 「3μg/m3以上7.5μg/m3未満」の区分に対応する呼吸用保護具は、25以上の防護係数が確保でき
   るものであり、具体的には、①粒子捕集効率が99.9%以上の全面形の面体を有する取替え式防じん
   マスク、②粒子捕集効率が99.97%以上の電動ファン付き呼吸用保護具であって、規格で定める電
   動ファンの性能区分が大風量形のもの及び③JIST8150で定める指定防護係数が25以上の給気式呼吸
   用保護具、が該当すること。
  ウ 「7.5μg/m3以上15μg/m3未満」の区分に対応する呼吸用保護具は、50以上の防護係数が確保で
   きるものであり、具体的には、①粒子捕集効率が99.9%以上の全面形の面体を有する取替え式防じ
   んマスク、②粒子捕集効率が99.97%以上の電動ファン付き呼吸用保護具(ルーズフィット形のもの
   を除く。)であって、規格で定める電動ファンの性能区分が大風量形のもの及び③JIST8150で定め
   る指定防護係数が50以上の給気式呼吸用保護具、が該当すること。
  エ 「15μg/m3以上30μg/m3未満」の区分に対応する呼吸用保護具は、100以上の防護係数が確保で
   きるものであり、具体的には、①粒子捕集効率が99.97%以上の全面形の面体を有する電動ファン
   付き呼吸用保護具、粒子捕集効率が99.97%以上の半面形の面体を有する電動ファン付き呼吸用保
   護具のうち、規格で定める電動ファンの性能区分が大風量形、かつ、漏れ率が1%以下(規格で定め
   る漏れ率に係る性能区分がS級又はA級)であって、(4)の方法により、労働者ごとに防護係数が100
   以上であることが確認されたもの及び②JIST8150で定める指定防護係数が100以上の給気式呼吸用
   保護具、が該当すること。
  オ 「30μg/m3以上300μg/m3未満」の区分に対応する呼吸用保護具は、1,000以上の防護係数が確
   保できるものであり、具体的には、①粒子捕集効率が99.97%以上の全面形の面体を有する電動ファ
   ン付き呼吸用保護具のうち、規格で定める電動ファンの性能区分が大風量形、かつ、漏れ率が0.1
   %以下(規格で定める漏れ率に係る性能区分がS級)であって、(4)の方法により、労働者ごとに防護
   係数が1,000以上であることが確認されたもの及び②JIST8150で定める指定防護係数が1,000以上
   の給気式呼吸用保護具、が該当すること。
  カ 「300μg/m3以上」の区分に対応する呼吸用保護具は、5,000以上の防護係数が確保できるもの
   であり、具体的には、JIST8150で定める指定防護係数が5,000以上の給気式呼吸用保護具が該当す
   ること。
 (3) (2)の粒子捕集効率は、本告示第3号の試験方法により測定した値とすること。
 (4) (2)エ及びオの労働者ごとの防護係数の確認は、当該確認に係る電動ファン付き呼吸用保護具を特
  化則第38条の7第1項第2号の規定に基づき、当該労働者に初めて使用させるとき、及びその後6月以内
  ごとに1回、定期に、JIST8150で定める方法により防護係数を求めることにより行う必要があること。
   また、事業者は、当該確認を行ったときは、労働者の氏名、電動ファン付き呼吸用保護具の種類、
  確認を行った年月日、防護係数の値を記録し、これを30年間保存する必要があること。
3 その他の留意事項
 (1) 防じんマスク及び電動ファン付き呼吸用保護具については、労働安全衛生法第44条の2の型式検定
  に合格したものを使用する必要があること。
 (2) 2(2)の呼吸用保護具であって、2(4)により防護係数の確認を行う呼吸用保護具以外のものについ
  ても、当該呼吸用保護具を特化則第38条の7第1項第2号の規定に基づき、労働者に初めて使用させる
  とき、及びその後6月以内ごとに1回、定期に、JIST8150で定める方法により防護係数を求めることに
  より、2(2)アからカまでにおいてそれぞれ規定している防護係数が確保されていることを確認するよ
  うに努めるべきこと。
 (3) 防じんマスク又は電動ファン付き呼吸用保護具を使用させる場合には、その都度、フィットチェッ
  カー等を用いて、面体と顔面との密着性を確認するように努めるべきこと。
 (4) 眼鏡を着用する労働者に全面形の面体を有する呼吸用保護具を使用させる場合には、眼鏡によって
  面体と顔面との密着性が損なわれるおそれがあるため、呼吸用保護具のメーカーが推奨する眼鏡と面
  体との隙間をふさぐ部品等を使用して密着性を確保するように努めるべきこと。
 (5) 本告示においては、作業環境測定の結果から得られた値が0.3μg/m3未満の場合には使用させるべ
  き呼吸用保護具を規定していないが、予防的観点から作業の状況に応じて防じんマスク等を使用させ
  ることが望ましいこと。


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