作業環境測定法施行規則の一部を改正する省令等の施行等について

基発0127第12号
令和2年1月27日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長

作業環境測定法施行規則の一部を改正する省令等の施行等について

 作業環境測定法施行規則の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第8号。以下「改正省令」とい
う。)及び作業環境測定基準等の一部を改正する告示(令和2年厚生労働省告示第18号。以下「改正告示」
という。)が、令和2年1月27日に公布及び告示され、令和3年4月1日(一部については令和2年4月1日)から
施行及び適用することとされたところである。その改正の趣旨、内容等については、下記のとおりである
ので、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。
第1 改正の趣旨及び概要
 1 改正の趣旨
   労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「安衛法」という。)第65条及び第65条の2においては、
  有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、必要な作業環境測定を
  行い、その結果の評価に基づいて適切な措置を講ずることを事業者に義務付けている。さらに、作業
  環境測定法(昭和50年法律第28号。以下「作環法」という。)第3条等においては、当該作業場のうち
  政令で定めるもの(以下「指定作業場」という。)について作業環境測定を行うときは、厚生労働省令
  で定めるところにより、事業場で使用する作業環境測定士に実施させること又は作業環境測定機関に
  委託して実施することを事業者に義務付けている。
   今般、化学物質の管理や有害業務の状況等を踏まえ、指定作業場において作業環境測定を行う際の
  デザイン及びサンプリングとして、従来のものに加え、当該指定作業場において作業に従事する労働
  者の身体に装着する試料採取機器等を用いて行う作業環境測定に係るデザイン及びサンプリング(以
  下「個人サンプリング法」という。)を新たに規定するため、作環法の委任省令である作業環境測定
  法施行規則(昭和50年労働省令第20号。以下「規則」という。)について所要の改正を行うとともに、
  作業環境測定基準(昭和51年労働告示第46号。以下「測定基準」という。)等について所要の改正を行
  ったものである。

 2 改正に係る基本的な考え方
  (1) 改正省令においては、個人サンプリング法による作業環境測定を実施するか否かについては、事
   業者の任意の選択に委ねることとしており、個人サンプリング法による測定が可能となる作業につ
   いては、個人サンプリング法及び従来の方法のいずれによっても問題ないこと。なお、事業者は、
   当該選択に当たっては、衛生委員会等において労働者の意見も踏まえた上で十分に審議することが
   望ましいこと。また、個人サンプリング法を実施するための登録を行うか否かについても、作業環
   境測定士又は作業環境測定機関の任意の選択に委ねることとしていること。
  (2) 改正告示において、個人サンプリング法による作業環境測定の対象となる測定については、個人
   サンプリング法の特性が特に発揮できるものとして規定されたものであること。
  (3) 個人サンプリング法による作業環境測定は、作業環境評価基準(昭和63年労働省告示第79号。以
   下「評価基準」という。)に基づき測定値を統計的に処理した評価値と測定対象物質の管理濃度と
   を比較して作業場の管理区分の決定を行うものであり、いわゆる個人ばく露測定には該当しないこ
   と。このため、作業環境測定結果の記録に試料採取機器等を装着した労働者の氏名を記載する必要
   はなく、当該労働者を示す番号等(例:労働者①)を用いること。
 
 3 改正省令の概要
   改正省令は、事業者が個人サンプリング法を用いた作業環境測定を実施又は委託することを選択し
  た場合の措置、また、作業環境測定士及び作業環境測定機関が個人サンプリング法についての登録す
  ることを選択したときの登録事項等を規定したこと。

 4 改正告示の概要
  (1) 測定基準関係
   ア 個人サンプリング法による作業環境測定の対象となる測定を規定するとともに、個人サンプリ
    ング法に係る試料空気の採取等の対象者数、時間等を規定したこと。
   イ 最新の日本産業規格(以下「JIS」という。)との整合等のため、外部放射線による線量当量率
    又は線量当量の測定に用いる測定機器の要件を改めたこと。
   ウ 3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン(いわゆるMOCA)の試料採取方法等について、
    新たに開発された方法に改めたこと。
  (2) 評価基準関係
    作業環境測定の結果の評価について、個人サンプリング法による測定結果に係る評価方法を追加
   したこと。
  (3) インジウム化合物等を製造し、又は取り扱う作業場において労働者に使用させなければならない
   呼吸用保護具(平成24年厚生労働省告示第579号。以下「インジウム告示」という。)関係
    インジウム化合物の濃度の測定結果の評価について、個人サンプリング法による測定結果に係る
   評価方法を追加したこと。
  (4) 作業環境測定士規程(昭和51年労働省告示第16号)関係
    作業環境測定士の資格の要件として登録講習機関が行う講習の細目について、個人サンプリング
   法に係る内容を追加したこと。

 5 施行・適用日、準備行為及び経過措置
  (1) 4の(1)のイ及びウに係る改正規定については、令和2年4月1日から適用し、それ以外の改正規定
   については、令和3年4月1日から施行及び適用すること。
  (2) 個人サンプリング法について、作業環境測定士又は作業環境測定機関の登録証の書換え及び作業
   環境測定機関の業務規定の変更等について、改正省令の施行前においても申請等を行うことができ
   ることとする等の準備行為を規定したこと。
  (3) 改正省令の施行の際現に規則第5条第1項第2号等の規定により第二種作業環境測定士の資格を有
   している者が、個人サンプリング法について作業環境測定士の登録及び登録証の書換えを申請する
   ための経過措置を規定したこと。

第2 細部事項
 1 改正省令関係
  (1) 附則第2条関係
    本条の「特例講習」については、別添1の「個人サンプリング法に関する特例講習の基準」によ
   ること。
  (2) 附則第5条関係
    本条は、規則第5条第1項第2号等の規定により既に第二種作業環境測定士となる資格を有してい
   る者に対して講習の受講を義務付ける規定がないことから、この省令の施行の際現に当該資格を有
   する者について、本条の規定に基づき個人サンプリング法に係る講習を受講することより、個人サ
   ンプリング法についての登録を行うことを可能とする趣旨であること。

 2 測定基準関係
  (1) 第8条関係
   ア 本条第1号は、ベータ線の測定について、電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41号)
    第54条第3項に規定する70マイクロメートル線量当量(率)が1センチメートル線量当量(率)の10
    倍を超えるおそれがある場所におけるベータ線測定のための測定器に関する規定を新設したもの
    であること。本条第1号の「適切に測定できるもの」には、JIS Z4333(X線,γ線及びβ線用線量
    当量(率)サーベイメータ)に適合するサーベイメータ又はJIS Z4345(X・γ線及びβ線用受動形
    個人線量計測装置並びに環境線量計測装置)に適合する受動形放射線測定器であって、70マイク
    ロメートル線量当量(率)(方向性線量当量(率))を測定できるものが含まれること。
   イ 本条第2号の中性子線の測定について、同号の「適切に測定できるもの」には、JIS Z4341(中
    性子用線量当量(率)サーベイメータ)に適合するサーベイメータ、JIS Z4416(中性子用固体飛跡
    個人線量計)に適合する受動形放射線測定器又はJIS Z4416(中性子用固体飛跡個人線量計)の応
    答特性に適合することが認められた受動型放射線測定器であって、1センチメートル線量当量(率)
    (周辺線量当量(率))を測定できるものが含まれること。
   ウ 本条第3号のガンマ線又はエックス線の測定について、同号の「適切に測定できるもの」には、
    JIS Z4333(X線,γ線及びβ線用線量当量(率)サーベイメータ)に適合するサーベイメータ又は
    JIS Z4345(X・γ線及びβ線用受動形個人線量計測装置並びに環境線量計測装置)に適合する受
    動形放射線測定器であって、1センチメートル線量当量(率)(周辺線量当量(率))又は70マイクロ
    メートル線量当量(率)(方向性線量当量(率))を測定できるものが含まれること。
  (2) 第10条第5項関係
   ア 本項本文の「低管理濃度特定化学物質」は、特定化学物質のうち管理濃度が0.05mg/m3(相当)
    以下の物質であって、D測定(本項第5号及び第6号の規定により行う測定(測定基準第11条第3項及
    び第13条5項において準用する場合を含む。)をいう。以下同じ。)の15分間の試料空気の採取等
    で、管理濃度の10分の1の濃度を測定できることが確認されたものを規定したものであること。
   イ 本項第1号の「試料採取機器等」の「等」には、検知管方式による測定機器が含まれること。
   ウ 本項第1号の「単位作業場所」は、測定基準第2条第1項第1号に規定する単位作業場所の考え方
    と同じであること。なお、個人サンプリング法の特性を踏まえると、労働者の作業中の行動範囲
    により、作業する区域が複数ある場合でも同一の単位作業場所となる場合があることから、A測
    定(測定基準第2条第1項第1号から第2号までの規定により行う測定(測定基準第10条第4項第10
    条の2第2項第11条第2項及び第13条第4項において準用する場合を含む。)をいう。以下同じ。)
    の場合の単位作業場所より広範囲となる場合があること。また、時間ごとに測定対象物質の濃度
    が大きく変動する作業場や複数の測定対象物質を使用する作業場等を時間的又は空間的に異なる
    単位作業場所として取り扱う必要があるかについては、測定基準第2条第1項第1号の単位作業場
    所と同様の考え方で判断する必要があること。
   エ 本項第2号の「ほぼ均一であると見込まれる作業」への該当の有無については、事前調査等に
    より、単位作業場所における労働者の作業中の行動範囲、測定対象物質の分布等の状況等を踏ま
    えて判断すること。
   オ 本項第2号の「適切な数の労働者」には、原則として単位作業場所における全ての労働者とす
    るが、作業内容等の調査を踏まえ、単位作業場所におけるばく露状態を代表できる抽出方法を用
    いて抽出された数の労働者が含まれること。
   カ 本項第3号の「作業に従事する全時間」には、単位作業場所外において作業に従事する時間は
    含まれないこと。また、本項第3号の試料空気の採取等の時間の短縮は、作業に従事する時間が2
    時間を超える場合のみに認められるものであり、当該時間が2時間以下の場合は、当該作業の全
    時間について試料空気の採取等を行う必要があること。
   キ 本項第4号について、作業に従事する時間を分割して試料空気等の採取等を行う際には、一の
    労働者が一の作業日のうち単位作業場所において作業に従事する全時間を均等に分割する必要が
    あること。なお、一の労働者に複数の試料採取機器等を装着して同時に試料空気の採取等を行う
    ことは、当該時間の分割には含まれないこと。また、測定精度の確保の観点から、測定の定量下
    限値が管理濃度の10分の1を上回ることがないように測定時間を確保する必要があること。なお、
    単位作業場所において作業に従事する労働者が1人であり、かつ当該者が一の作業日のうち作業
    に従事する時間が15分未満の場合、D測定の測定時間である15分間を満たさないため、個人サン
    プリング法は適用できないこと。
   ク D測定は、C測定(本項第1号から第4号までの規定により行う測定(測定基準第11条第3項及び第
    13条第5項において準用する場合を含む。)をいう。以下同じ。)の結果を評価するだけでは労働
    者が有害物質への大きなばく露を受ける可能性を見逃すおそれのある作業が存在する場合に、有
    害物質の発散源に近接する場所における作業について測定を行う趣旨のものであること。
   ケ 本項第6号の「15分間」は、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)が提案した短時間ばく露限度(ST
    EL)の限度時間(15分間)を踏まえて規定したものであること。この趣旨から、D測定に係る試料空
    気の採取等の時間は、連続した15分間とする必要があること。
  (3) 第13条第5項関係
    本項の「塗装作業等」の「等」には、発散源が作業に従事する労働者とともに移動し、当該発散
   源と当該労働者の間に定置式の試料採取機器等を設置することが困難な作業が含まれること。

 3 作業環境測定士規程関係
  (1) 講習科目のうち、作業環境について行うデザイン及びサンプリングの実務のうち個人サンプリン
   グ法に係るものの実施に当たっては、「作業環境測定士講習について」(昭和51年6月17日付け基発
   第461号。昭和56年6月9日付け基発第342号、平成16年3月19日付け基発第0319009号等により一部
   改正。以下「講習通達」という。)を、本通達により次のとおり改める。
   ア 講習通達の3(3)ハ(イ)を次のとおり改めること。
     (イ) 筆記試験の方法については、作業環境測定士規程第3条に規定する講習の科目のうち「労
      働衛生管理の実務」及び「作業環境測定についてデザイン及びサンプリングの実務のうち個
      人サンプリング法以外のものに係るもの」は、併せて試験を実施するものとし、両科目の講
      習終了後1時間を当てるものとすること。また、同条に規定する講習の科目のうち、「作業
      環境測定についてデザイン及びサンプリングの実務のうち個人サンプリング法に係るもの」
      及び規則別表第1号から第5号までの作業場の作業環境について行う分析の実務に関する科目
      については、科目別に試験を行うものとし、講習終了後、それぞれ30分間を当てるものとす
      ること。
   イ 講習通達の別紙2「講習の具体的実施方法」の「作業環境について行うデザイン及びサンプリ
    ングの実務」の項を別添2のとおり改めること。
  (2) 附則関係
    改正告示附則第2項は、この告示の適用の際現に作業環境測定法第5条に規定する試験に合格して
   いる者については、当該試験の出題範囲には個人サンプラリング法に係る法令が含まれていないこ
   とから、当該法令に関する知識を習得させるため、個人サンプリング法に係る講習科目の範囲に個
   人サンプリング法に係る法令(1時間)を追加する趣旨であること。

 4 評価基準及びインジウム告示関係
   評価基準第4条の規定及びインジウム告示第3号の規定は、C測定又はD測定を実施した場合には、A
  測定及びその測定値をC測定及びその測定値に、B測定及びその測定値をD測定及びその測定値にそれ
  ぞれ読み替える趣旨であること。




  
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