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別添1

個人サンプリング法による作業環境測定及びその結果の評価に関するガイドライン

第1 趣旨等
 1 趣旨
   労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「安衛法」という。)第65条及び第65条の2においては、
  有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、必要な作業環境測定
  を行い、その結果の評価に基づいて適切な措置を講ずることを事業者に義務付けている。さらに、作
  業環境測定法(昭和50年法律第28号。以下「作環法」という。)第3条等においては、当該作業場のう
  ち政令で定めるもの(以下「指定作業場」という。)について作業環境測定を行うときは、その使用す
  る作業環境測定士に実施させること又は作業環境測定機関に委託して実施することを事業者に義務付
  けている。
   今般、化学物質の管理や有害業務の状況等を踏まえ、指定作業場において作業環境測定を行う際の
  デザイン及びサンプリングとして、従来のものに加え、当該指定作業場において作業に従事する労働
  者の身体に装着する試料採取機器等を用いて行う作業環境測定に係るデザイン及びサンプリング(以
  下「個人サンプリング法」という。)を新たに規定するため、作環法の委任省令である作業環境測定
  法施行規則(昭和50年労働省令第20号。以下「規則」という。)作業環境測定基準(昭和51年労働省
  告示第46号。以下「測定基準」という。)等が改正され、令和3年4月1日より施行される。
   本ガイドラインは、改正後の測定基準及び作業環境評価基準(昭和63年労働省告示第79号。以下
  「評価基準」という。)に規定された事項のほか、個人サンプリング法による作業環境測定を適切に
  実施するために事業者が実施すべき事項を一体的に示すことを目的としている。

 2 個人サンプリング法による作業環境測定の対象となる測定
   個人サンプリング法による作業環境測定の対象となる測定については、個人サンプリング法の特性
  が特に発揮できるものとして次のとおり規定されていること。
  (1) 労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「令」という。)別表第3に掲げる特定化学
   物質のうち、管理濃度の値が低いもの(令別表第3第1号6又は同表第2号3の2、9から11まで、13、
   13の2、19、21、22、23若しくは27の2に掲げるものをいう。以下「低管理濃度特定化学物質」と
   いう。)及び鉛に係る測定。
  (2) 令別表第6の2第1号から第47号までに掲げる有機溶剤及び特定化学物質障害予防規則(昭和47年
   労働省令第39号。以下「特化則」という。)第2条第3号の2に規定する特別有機溶剤(以下「有機溶
   剤等」という。)に係る測定のうち、塗装作業等有機溶剤等の発散源の場所が一定しない作業が行
   われる単位作業場所で行われるもの。
    なお、「塗装作業等」の「等」には、発散源が作業に従事する労働者とともに移動し、当該発
   散源と当該労働者の間に定置式の試料採取機器等を設置することが困難な作業が含まれること。

 3 基本的な考え方
  (1) 個人サンプリング法による作業環境測定を実施するか否かについては、事業者の任意の選択に
   委ねることとしており、個人サンプリング法による測定が可能となる作業については、個人サン
   プリング法及び従来の方法のいずれによっても問題ないこと。事業者は、当該選択に当たっては、
   衛生委員会等において労働者の意見も踏まえた上で十分に審議することが望ましいこと。
  (2) 個人サンプリング法による作業環境測定は、評価基準に基づき測定値を統計的に処理した評価
   値と測定対象物質の管理濃度とを比較して作業場の管理区分の決定を行うものであり、いわゆる
   個人ばく露測定には該当しないこと。

 4 実施者
  (1) 事業者は、個人サンプリング法による作業環境測定に係るデザイン及びサンプリングを行うと
   きは、個人サンプリング法について登録を受けている作業環境測定士に実施させること。
  (2) 事業者は、自ら作業環境測定を行うことができないときであって、個人サンプリング法による
   作業環境測定に係るデザイン及びサンプリングを行うときは、個人サンプリング法について登録
   を受けている作業環境測定機関又は指定測定機関(以下「測定機関等」という。)に委託すること。
  (3) 測定機関等は、個人サンプリング法による作業環境測定に係るデザイン及びサンプリングを行
   うときは、個人サンプリング法について登録を受けている作業環境測定士に実施させること。

第2 C測定の実施方法
   事業者又は測定機関等は、次に掲げるところにより、C測定(測定基準第10条第5項第1号から第4号
  までの規定により行う測定(測定基準第11条第3項及び第13条第5項において準用する場合を含む。)
  をいう。以下同じ。)を実施すること。
 1 C測定の趣旨及び単位作業場所
  (1) C測定は、単位作業場所(作業場の区域のうち労働者の作業中の行動範囲、有害物の分布等の状
   況等に基づき定められる作業環境測定のために必要な区域をいう。以下同じ。)における気中有害
   物質の平均的な状態を把握するための測定であること。
  (2) C測定における単位作業場所は、個人サンプリング法の特性を踏まえると、労働者の作業中の行
   動範囲により、作業する区域が複数ある場合でも同一の単位作業場所となる場合があることから、
   従来のA測定(測定基準第2条第1項第1号から第2号までの規定により行う測定(測定基準第10条第4
   項第10条の2第2項第11条第2項及び第13条第4項において準用する場合を含む。)をいう。以下
   同じ。)の単位作業場所より広範囲となる場合があること。また、時間ごとに測定対象物質の濃度
   が大きく変動する作業場や複数の測定対象物質を使用する作業場等を時間的又は空間的に異なる
   単位作業場所として取り扱う必要があるかについては、従来の単位作業場所と同様の考え方で判
   断する必要があること。

 2 試料空気の採取等及び均等ばく露作業
  (1) 試料空気の採取等は、単位作業場所において作業に従事する労働者の身体に装着する試料採取
   機器等を用いる方法により行うこと。
    なお、「試料採取機器等」の「等」には、検知管方式による測定機器が含まれること。
  (2) 試料採取機器等の装着は、単位作業場所において、労働者にばく露される第1の2(1)及び(2)の
   物質(以下「測定対象物質」という。)の量がほぼ均一であると見込まれる作業ごとに、それぞれ、
   適切な数の労働者に対して行うこと。ただし、その数は、それぞれ、5人を下回ってはならないこ
   と。
  (3) (2)の「ほぼ均一であると見込まれる作業」への該当の有無については、事前調査等により、単
   位作業場所における労働者の作業中の行動範囲、測定対象物質の分布等の状況等を踏まえて判断す
   ること。
  (4) (2)の「適切な数の労働者」は、原則として単位作業場所における全ての労働者とするが、作業
   内容等の調査を踏まえ、単位作業場所におけるばく露状態を代表できる抽出方法を用いて抽出され
   た数の労働者が含まれること。
  (5) 単位作業場所において作業に従事する労働者の数が5人を下回る場合にあっては、同一の労働者
   が同一の作業日のうち単位作業場所において作業に従事する時間を分割し、2以上の試料空気の採
   取等が行われたときは、当該試料空気の採取等は、当該2以上の採取された試料空気の数と同数の
   労働者に対して行われたものとみなすことができること。

 3 試料空気の採取等の時間
  (1) 試料空気の採取等の時間は、単位作業場所において作業に従事する試料採取機器を装着する労
   働者が同一作業日のうち単位作業場所において作業に従事する全時間とすること。ただし、当該
   作業に従事する時間が2時間を超える場合であって、同一の作業を反復する等労働者にばく露され
   る測定対象物質の濃度がほぼ均一であることが明らかなときは、2時間を下回らない範囲内で、当
   該試料空気の採取等の時間を短縮することができること。
  (2) (1)の「作業に従事する全時間」には、単位作業場所外において作業に従事する時間は含まれな
   いこと。また、(1)の「試料空気の採取等の時間の短縮」は、作業に従事する時間が2時間を超え
   る場合のみに認められるものであり、当該時間が2時間以下の場合は、当該作業の全時間について
   試料空気の採取等を行う必要があること。
  (3) 2(5)について、作業に従事する時間を分割して試料空気の採取等を行う際には、同一の労働者
   が同一の作業日のうち単位作業場所において作業に従事する全時間を均等に分割する必要があるこ
   と。この場合、次の事項に留意すること。
   ア 測定精度の確保の観点から、測定の定量下限値が別紙1に掲げる測定対象物質の管理濃度の10
    分の1を上回ることがないように測定時間を確保する必要があること。
   イ 同一の労働者に複数の試料採取機器等を装着して同時に試料空気の採取等を行うことは、当該
    時間の分割には含まれないこと。

 4 試料採取方法及び分析方法
   試料採取方法及び分析方法は、測定対象物質の種類に応じて、別紙2に掲げる試料採取方法又はこ
  れと同等以上の性能を有する試料採取方法及び別紙2に掲げる分析方法又はこれと同等以上の性能を
  有する分析方法とすること。

第3 D測定の実施方法
   事業者又は測定機関等は、次に掲げるところにより、D測定(測定基準第10条第5項第5号及び第6号
  の規定により行う測定(測定基準第11条第3項及び第13条第5項において準用する場合を含む。)をい
  う。以下同じ。)を実施すること。

 1 趣旨
   D測定は、C測定の結果を評価するだけでは労働者が有害物質への大きなばく露を受ける可能性を見
  逃すおそれのある作業が存在する場合に、有害物質の発散源に近接する場所における作業について測
  定を行う趣旨のものであること。

 2 試料空気の採取等及び試料空気の採取等の時間
  (1) 測定対象物質の発散源に近接する場所において作業が行われる単位作業場所がある場合に、測
   定対象物質の発散源に近接する場所において作業に従事する労働者の身体に装着する試料採取機
   器等を用いる方法により行うこと。
  (2) 試料空気の採取等は、当該作業が行われる時間のうち、空気中の測定対象物質の濃度が最も高
   くなると思われる時間に行うこと。
  (3) 試料空気の採取等の時間は、連続した15分間とする必要があること。したがって、単位作業場
   所において作業に従事する労働者が1人であり、かつ当該者が同一の作業日のうち作業に従事する
   時間が15分未満の場合、個人サンプリング法は適用できないこと。

 3 試料採取方法及び分析方法
   試料採取方法及び分析方法は、測定対象物質の種類に応じて、別紙2に掲げる試料採取方法又はこ
  れと同等以上の性能を有する試料採取方法及び別紙2に掲げる分析方法又はこれと同等以上の性能を
  有する分析方法とすること。

第4 個人サンプリング法による作業環境測定の結果の評価
   事業者又は測定機関等は、次に掲げるところにより、個人サンプリング法による作業環境測定の結
  果の評価を行うこと。

 1 評価値の計算
  (1) 同一の作業日についてのみ測定を行った場合
    第1評価値及び第2評価値は、次の式により計算するものとする。
式

    これらの式において、ECMσ及びECは、それぞれ次の値を表すものとする。
     EC 第1評価値
     M  C測定の測定値の幾何平均値
     σ C測定の測定値の幾何標準偏差
     EC 第2評価値

  (2) 連続する2作業日(連続する2作業日について測定を行うことができない合理的な理由がある場合
   にあっては、必要最小限の間隔を空けた2作業日。以下同じ。)に測定を行った場合
    第1評価値及び第2評価値は、次の式により計算することができる。
式


     これらの式において、ECMMσσ及びECは、それぞれ次の値を表すものと
     する。
       EC 第1評価値
       M  1日目のC測定の測定値の幾何平均値
       M  2日目のC測定の測定値の幾何平均値
       σ 1日目のC測定の測定値の幾何標準偏差
       σ 2日目のC測定の測定値の幾何標準偏差
       EC 第2評価値


  (3) 計算に当たっての留意事項
    計算に当たっては、次の事項に留意すること。
    ア 測定対象物質の濃度が当該測定で採用した試料採取方法及び分析方法によって求められる
     定量下限の値に満たない測定値がある単位作業場所にあっては、当該定量下限の値を当該測
     定値とみなすこと。
    イ 測定値が管理濃度の10分の1に満たない測定値がある単位作業場所にあっては、管理濃度の
     10分の1を当該測定値とみなすことができること。
    ウ 有機溶剤等を2種類以上含有する混合物に係る単位作業場所にあっては、測定値ごとに、次
     の式により計算して得た換算値を当該測定値とみなして、区分を行うこと。この場合におい
     て、管理濃度に相当する値は、1とすること。
式
 2 測定結果の評価
   測定結果の評価は、単位作業場所ごとに、次に掲げる場合に応じ、それぞれア及びイの表に掲げる
  ところにより、第1管理区分から第3管理区分までに区分することにより行うものとすること。なお、
  管理濃度は、測定対象物質の種類に応じて別紙1に掲げるところによること。
  ア C測定のみを行った場合
C測定
第1評価値
<管理濃度
第2評価値
≦管理濃度
≦第1評価値
第2評価値
>管理濃度
第1管理区分 第2管理区分 第3管理区分
  イ C測定及びD測定を行った場合
  C測定
第1評価値
<管理濃度
第2評価値
≦管理濃度
≦第1評価値
第2評価値
>管理濃度
D

D測定値
<管理濃度
第1管理区分 第2管理区分 第3管理区分
管理濃度
≦D測定値
≦管理濃度×1.5
第2管理区分 第2管理区分 第3管理区分
D測定値
>管理濃度×1.5
第3管理区分 第3管理区分 第3管理区分

第5 作業環境測定の結果の評価に基づく措置
   事業者は、第4の2の区分に応じて次の措置を行うこと。
 1 第3管理区分に区分された場所
  (1) 直ちに、施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備
   の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するため必要な措置を講じ、
   当該場所の管理区分が第1管理区分又は第2管理区分となるようにしなければならないこと。
  (2) (1)の措置を講じたときは、その効果を確認するため、当該場所について測定対象物質の濃度を
   測定し、その結果の評価を行わなければならないこと。
  (3) (1)及び(2)のほか、第3管理区分に区分された場所については、労働者に有効な呼吸用保護具を
   使用させるほか、健康診断の実施その他労働者の健康の保持を図るため必要な措置を講じなければ
   ならないこと。
  (4) 第4の評価に係る記録、(1)の措置及び(3)の評価の結果を次に掲げるいずれかの方法によって労
   働者に周知しなければならないこと。
   ア 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。
   イ 書面を労働者に交付すること。
   ウ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該
    記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

 2 第2管理区分に区分された場所
  (1) 施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又
   は整備、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するため必要な措置を講ずるよう努
   めなければならないこと。
  (2) 第4の評価に係る記録及び(1)の措置を1の(4)に掲げるいずれかの方法によって労働者に周知し
   なければならないこと。

第6 作業環境測定の結果及びその評価の記録の保存
   事業者は、次に掲げるところにより、作業環境測定の結果及びその評価の記録を保存すること。
 1 測定結果
  (1) 記録事項
    測定対象物質の濃度の測定を行ったときは、その都度次の事項を記録すること。なお、ウの測
   定箇所においては、試料採取機器等を装着した労働者の氏名を記載する必要はなく、当該労働者
   を示す番号等(例:労働者①)を用いること。
   ア 測定日時
   イ 測定方法
   ウ 測定箇所
   エ 測定条件
   オ 測定結果
   カ 測定を実施した者の氏名
   キ 測定結果に基づいて労働者の健康障害の予防措置を講じたときは、その措置の概要
  (2) 記録の保存
    記録の保存については、次のとおりとすること。
   ア 低管理濃度特定化学物質及び鉛に係る測定については3年間。ただし、令別表第3第1号6に掲
    げる物又は同表第2号3の2、13の2、19若しくは27の2に掲げる物に係る測定並びにクロム酸等
    (特化則第36条第3項に規定するものをいう。)を製造する作業場及びクロム酸等を鉱石から製造
    する事業場においてクロム酸等を取り扱う作業場について行った令別表第3第2号11又は21に掲
    げる物に係る測定(以下「クロム酸等に係る測定」という。)については30年間。
   イ 有機溶剤等に係る測定については3年間。ただし、特別有機溶剤に係る測定については30年間。

 2 測定結果の評価
  (1) 記録事項
    測定結果の評価を行ったときは、その都度次の事項を記録すること。
   ア 評価日時
   イ 評価箇所
   ウ 評価結果
   エ 評価を実施した者の氏名
  (2) 記録の保存
    記録の保存については、次のとおりとすること。
   ア 低管理濃度特定化学物質及び鉛に係る測定については3年間。ただし、令別表第3第1号6に掲
    げる物又は同表第2号13の2、19若しくは27の2に掲げる物に係る測定並びにクロム酸等に係る測
    定については30年間。
   イ 有機溶剤等に係る測定については3年間。ただし、特別有機溶剤に係る測定については30年間。