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工夫・改善事例

つり下げ式鋳造用フロート・スクリーン

業種

非鉄金属製造業

動機

当社はアルミニウムの板材を製造している。板材は直方体のスラブ(鋳魂)を圧延して製造しており、このスラブの製造を担当しているのが私たちの職場で、原材料を溶解し、鋳造する工程図1で1炉当たり4〜6人のグループで作業をしている。

鋳造作業はパッチ式のDC鋳造法(直接冷却鋳造法)のため図2、1回の鋳造ごとに鋳造樋及び治具類を着脱し、次の鋳造の段取りを行っていたが、作業は高温(700〜750℃)の溶けたアルミのごく近くで行うため、潜在的な危険がつきまとっている。

特にその中で最も人手を要する作業は鋳造準備作業と鋳造終了作業で、フロート(3.1s)の取付け及び、ガラススクリーン(10s)、フロートの取外しなどで重いものを扱ううえ窮屈な作業姿勢を強いられるとともに、フロート除去の際、落下させると溶湯を飛散させる危険、スクリーン除去時には鋳型溶湯内に足を滑らせる危険もあった。

そのため、フロート及びガラススクリーンを取り扱う作業を、作業者が安全に、楽に取付け、取外しができるように改善を図った。

内容

フロート及びガラススクリーンを鋳造樋につり下げることにより、危険な湯面に近付くことなくフロート、スクリーンを着脱できるようにした。

(1) フロートの着脱方法の改善

従釆の方法の問題点は、①フロートがノズルと分離した構造であったため、スクリーンを取り付けた後にフロートを鋳造樋に取り付けるときに作業者が1から2個のフロートを持って鋳造樋を降下させながらフロートをノズルに入れていたが、このときに屈んだ無理な姿勢を強いられる、②鋳造樋には4から6個のノズルがあるため、複数の作業者が共同で作業しなければならない、③鋳造スタート時の湯通し作業においてスクリーンをゆするときに、スクリーン上に乗ったフロートとスクリーンがこすれてスクリーンに穴が空いてしまい製品不良を引き起こす、④各設備ごとに「内段取り」として1日に最大6ヵ所×6回から8回行うための生産性阻害、ということが挙げられていた。

これに対し、次のような内容の改善を行った。

  1. ① フロートをノズルに掛けるつり金具を考案製作した(図3)。
  2. ② 材質は耐熱性、耐腐食性に優れたステンレス鋼を採用した。
  3. ③ フロートをノズルに差し込み、ノズルの軸に対して90度回転させることにより金具がひっかかる構造にした。

この改善により、鋳造開始前に固定されているフロートは、鋳造開始と同時に溶湯により押し上げられ、フリーな状態になり鋳造湯面の制御を行うことができる。

(2) ガラススクリーンの着脱方法の改善

従来の方法の問題点として、①スクリーン枠はアルミ溶湯の直上に設置されているため、枠は非常に高温で取外し時は皮手袋を着用しても非常に熱い、②溶湯に浸漬したスクリーンは重量が10kg程度あり、これを足場の悪い場所で屈んだ姿勢で持ち上げるため腰、腕に大きな負荷がかかっていた、③凝固前の溶湯の上で作業のため、作業中に異物が落下し、しばしば製品不良の原因となっていた。

これに対し、次のような内容のの改善を行った。

  1. ① ワイヤとリングを組み合わせたつり具を考案、製作し、鋳造樋に取り付けて、つり下げるようにした。
  2. ② ワイヤの上部にスプリングを入れ、常時ワイヤを引っ張る構造にしてワイヤがたるんでしまわないようにした(写真3)。

以上の「フロートのつり下げ」方式、「ガラススクリーンのつり下げ」方式を全炉(8基)に適用した。さらに金具、つり下げワイヤ等の部品は、劣化、損傷を考慮し、汎用性の高い部品で構成し、常時予備品を準備し、治具は壊れた部品のみを交換できるようにした。

これにより、鋳造樋にフロート、ガラススクリーンを外段取りで取り付け、そのままホイストで鋳型に取り付けおよび取り外せるようになった。

効果

  1. 熱い所へ近付いての作業が低減され、作業が楽にできるようになり作業負荷が大きく軽減され、職場が快適になり、作業意欲が向上した。
  2. 高温設備、高温のアルミ溶湯に近付いての作業が低減され、労働災害(特に火傷)防止上で非常に大きな効果を得た。
  3. 改善に対する意欲が向上し、職場の改善提案活動やQCサークル活動が活性化した。
  4. 経済的効果については、鋳造段取り時間の短縮、それに伴う増産効果による生産性向上、不良低減の効果等により年間110,750,080円にも達した。

期間

平成8年4月〜10月

費用

609,920円

特許・実用新案申請の有無

無し

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