相対濃度指示方法による測定において使用する質量濃度変換係数及び妨害物質がある場合における検知管方式による測定の具体的方法について

基発第462号
平成2年7月17日
都道府県労働基準局長 殿
労働省労働基準局長

相対濃度指示方法による測定において使用する質量濃度変換係数及び妨害物質がある場合における検知管方式による測定の具体的方法について

 作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号。以下「測定基準」という。)第2条第3項に規定する質量
濃度変換係数並びに同基準第10条第3項及び第13条第3項の規定に基づく測定の具体的方法について下記の
とおり定めたので、作業環境測定士、作業環境測定機関、事業者等関係者に周知徹底を図るとともに、そ
の運用に遺憾のないようにされたい。
第1 相対濃度指示方法による測定において使用する質量濃度変換係数について
   測定基準第2条第3項に規定する質量濃度変換係数については、以下のとおりとする。

 1 「単位作業場所について求めた数値」について
   「単位作業場所について求めた数値」は、粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令18号)第26条第3
  項の許可に係る単位作業場所について、同項の規定による較正を受けた測定機器を用いて、以下の方
  法により求めた数値とすること。
  (1) 当該単位作業場所についての直近の測定及び当該測定からさかのぼる連続した測定において求め
   た4つの質量濃度変換係数の平均値とすること。
    この場合における測定は、粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号。以下「粉じん則」と
   いう。)第26条第1項の規定による作業環境測定の際に行う併行測定のほか、作業が定常的に行われ
   ている時間帯に行われた併行測定のみでも差し支えないこと。ただし、各測定の間隔は、1月以上
   をあけて行われたものであること。
  (2) (1)の4つの質量濃度変換係数のうちの最大値が最小値の2倍を超える場合には、(1)の平均値か
   ら最も離れた係数1つ(最大値と最小値が等しく離れている場合は最小値)を除く3つの係数の平均値
   とすること。
    この場合において、当該3つの係数のうち最大値が最小値の2倍を超えるときには、当該3つの係
   数の平均値によることはできず、2の「厚生労働省労働基準局長が示す数値」によること。
  (3) (1)の4つの質量濃度変換係数のうち1つが次のイ又はロのいずれかに該当する場合は、当該係数
   を除く3つの係数の平均値とすること。
   イ 光散乱方式による測定機器にあっては、20未満
単位 平均粒径0.3μmのステアリン酸に対する質量濃度変換係数が、
   0.01mg/m3/cpmの測定機器にあっては、 10-3mg/m3/cpm
   0.001mg/m3/cpmの測定機器にあっては、10-4mg/m3/cpm
   ロ 圧電天秤方式による測定機器にあっては、1.0未満
     この場合において、2つ以上の質量濃度変換係数がイ又ロのいずれかに該当する場合は、当該3
    つの係数の平均値によることはできず、2の「厚生労働省労働基準局長が示す数値」によること。

 2 「厚生労働省労働基準局長が示す数値」について
   「厚生労働省労働基準局長が示す数値」は、当面、次に掲げる機器について適用することとし、当
  該機器の種類に応じ、次のイ又はロに掲げる数値とすること。
   光散乱方式による測定機器 P-5L、P-5H、LD-1L、LD-1H(以上、柴田科学器械工業株式会社製)
   イ 粉じん則別表第2第15号の特定粉じん発生源に係る特定粉じん作業が行われる屋内作業場……
    45(ただし、LD-1L、LD-1Hについては25)
   ロ その他の特定粉じん発生源に係る特定粉じん作業が行われる屋内作業場……60(ただし、LD-1L、
    LD-1H については25)
単位 平均粒径0.3μmのステアリン酸に対する質量濃度変換係数が、
   0.01mg/m3/cpmの測定機器にあっては、10-3mg/m3/cpm
   0.001mg/m3/cpmの測定機器にあっては、10-4mg/m3/cpm
        

第2 測定基準第10条第3項の規定に基づく特定化学物質等の濃度の測定の具体的方法について
   妨害物質がある場合における検知管方式による測定機器を用いる方法(以下「検知管方式」という。)
  による特定化学物質等の濃度の測定の具体的方法については、以下のとおりとする。

 1 検知管の選定について
   昭和63年9月16日付け基発第604号「作業環境測定基準の一部改正について」(以下「第604号通達」
  という。)の記の第2の7の(3)によること。
   また、特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)第2条第1項
  第3号の3に規定する特別有機溶剤等のうち同項第3号の2に規定する特別有機溶剤を2種類以上含有す
  る物(以下「混合特別有機溶剤」という。)を測定する場合には、主成分用以外の検知管の方が測定対
  象である特別有機溶剤の濃度をより適切に測定できる場合があるので、次の要領で、適切な検知管を
  選定することが望ましい。
  (1) 当該混合特別有機溶剤の成分に応じ、次の検知管を用いてあらかじめ発散源近くの任意の1点に
   おいて、当該混合特別有機溶剤の主成分用検知管と比較測定を行うこと。
    なお、特別有機溶剤の分類については別添によること。
   イ 芳香族系の特別有機溶剤を含有する場合……トルエン用検知管
   ロ 塩素系の特別有機溶剤を含有する場合……トリクロロエチレン用検知管
   ハ 脂肪族系の特別有機溶剤を含有する場合……酢酸エチル用検知管
  (2) 比較測定の結果、着色層の長さが最も長いものを選定すること。この場合において、着色の境界
   が不明瞭で、読み取り誤差が大きくなるおそれのあるものがあれば、これを除いて選定すること。

 2 併行測定について
  (1) 併行測定点は、次のイ又はロの点のいずれかとすること。ただし、ロの点を併行測定点とした場
   合であって、当該測定点における検知管の指示値がイの点における指示値に比べて著しく小さいと
   きは、イの点を併行測定点とすること。
   イ デザインにおいて決定された測定点のうち、検知管による測定を行った結果、検知管の指示値
    が最大の点
   ロ 前回の測定における各測定点のうち、測定値が最大の点
  (2) 併行測定点における試料空気の捕集及び分析については、次のイ又はロのいずれかによること。
   イ 併行測定点において、捕集袋等に捕集した試料空気を検知管方法と測定基準別表第1に掲げる
    分析方法の双方の分析方法により分析する。
   ロ 併行測定点において、検知管方法による測定を行うと同時に試料空気を捕集し、当該試料空気
    を測定基準別表第1に掲げる分析方法により分析する。

 3 測定値変換係数の算出について
   併行測定点において測定基準別表第1に掲げる方法により求めた測定値と当該測定点における検知
  管の指示値から、次の式により測定値変換係数を求めること。
   なお、測定対象物が混合特別有機溶剤の場合には、個々の特別有機溶剤ごとに測定値変換係数を求
  めること。
    測定値変換係数=
     併行測定点における測定値(ppm)/併行測定点における検知管の指示値(ppm)

 4 測定値の決定について
   3の式により求めた測定値変換係数を併行測定点以外の測定点における検知管の指示値に掛け合わ
  せることにより、各測定点における測定値を求めること。
   なお、測定対象物が混合特別有機溶剤の場合には、3の式により求めた個々の特別有機溶剤の測定
  値変換係数を用いて、各測定点における個々の特別有機溶剤の測定値を求めること。

 5 測定結果の記録
   特化則第36条第2項第5号の測定結果については、次の事項を記録すること。
  (1) 併行測定点における、測定基準別表第1に掲げる方法により求めた測定値(混合特別有機溶剤の場
   合には、測定基準別表第1に掲げる方法により求めた個々の特別有機溶剤の測定値)
  (2) 併行測定点における検知管の指示値
  (3) 測定値変換係数(混合特別有機溶剤の場合には、個々の特別有機溶剤の測定値変換係数)
  (4) 併行測定点以外の測定点における、検知管の指示値及び4により求めた測定値(混合特別有機溶剤
   の場合には、検知管の指示値及び4により求めた個々の特別有機溶剤の測定値)

第3 測定基準第13条第3項の規定に基づく有機溶剤の濃度の測定の具体的方法について
   妨害物質がある場合における検知管方式による有機溶剤(特別有機溶剤を含む。以下第3において同
  じ。)の濃度の測定の具体的方法については、以下のとおりとする。

 1 検知管の選定について
   第604号通達の記の第2の10の(3)によること。
   この場合、主成分用以外の検知管の方が測定対象である有機溶剤の濃度をより適切に測定できる場
  合があるので、次の要領で、適切な検知管を選定することが望ましい。
  (1) 当該混合有機溶剤の成分に応じ、次の検知管を用いてあらかじめ発散源近くの任意の1点におい
   て、当該有機溶剤の主成分用検知管と比較測定を行うこと。
    なお、有機溶剤の分類については別添によること。
   イ 芳香族系の有機溶剤を含有する場合……トルエン用検知管
   ロ 塩素系の有機溶剤を含有する場合……トリクロロエチレン用検知管
   ハ 脂肪族系の有機溶剤を含有する場合……酢酸エチル用検知管
  (2) 比較測定の結果、着色層の長さが最も長いものを選定すること。
    この場合において、着色の境界が不明瞭で、読み取り誤差が大きくなるおそれのあるものがあれ
   ば、これを除いて選定すること。

 2 併行測定について
  (1) 併行測定点は、次のイ又はロの点のいずれかとすること。ただし、ロの点を併行測定点とした場
   合であって、当該測定点における検知管の指示値がイの点における指示値に比べて著しく小さいと
   きは、イの点を併行測定点とすること。
   イ デザインにおいて決定された測定点のうち、検知管による測定を行った結果、検知管の指示値
    が最大の点
   ロ 前回の測定における各測定点のうち、換算値(作業環境評価基準(昭和63年労働省告示第79号)
    第2条第4項に定める換算値をいう。以下同じ。)が最大の点
  (2) 併行測定点における試料空気の捕集及び分析については、次のイ又はロのいずれかによること。
   イ 併行測定点において、捕集袋等に捕集した試料空気を検知管方法と測定基準別表第2に掲げる
    分析方法の双方の分析方法により分析する。
   ロ 併行測定点において、検知管方法による測定を行うと同時に試料空気を捕集し、当該試料空気
    を測定基準別表第2に掲げる分析方法により分析する。

 3 換算値変換係数の算出について
   併行測定点において測定基準別表第1又は別表第2に掲げる方法による測定結果から求めた換算値と
  当該測定点における検知管の指示値から、次の式により換算値変換係数を求めること。
    換算値変換係数(ppm)=
      併行測定点における換算値/併行測定点における検知管の指示値(ppm)

 4 換算値の算出ついて
   3の式により求めた換算値変換係数を併行測定点以外の測定点における検知管の指示値に掛け合わ
  せることにより、各測定点における換算値を求めること。

 5 測定結果の記録
   有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号)第28条第3項第5号(特化則第36条の5において準
  用する場合を含む。)の測定結果については、次の事項を記録すること。
  (1) 併行測定点における、測定基準別表第1又は別表第2に掲げる方法により求めた個々の特別有機溶
   剤及び有機溶剤についての測定値及び換算値
  (2) 併行測定点における検知管の指示値
  (3) 換算値変換係数
  (4) 併行測定点以外の測定点における、検知管の指示値及び4により求めた換算値



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