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山岳トンネル工事に係るセーフティ・アセスメントに関する指針について

改正履歴


                                                                          基発第448号の2
                                                                           平成8年7月5日

  建設業における労働災害を防止するためには、施工中の安全衛生対策の充実を図ることはもとより、こ
れに先立って仕事の工程、機械、設備等についての危険性を事業者自らが評価し、その安全衛生対策を施
工前に検討しておくことが肝要である。
  このため、従来から、設計、計画段階における事前評価の実施促進を図るため、工事の種類ごとに、順
次、セーフティ・アセスメントに関する指針を公表してきたところであるが、今般、施工技術の進歩、関
係法令の改正等を踏まえ、昭和57年に作成した従来の「トンネル建設工事に係るセーフティ・アセスメン
トに関する指針」を廃止し、新たに別添1のとおり「山岳トンネル工事に係るセーフティ・アセスメント
指針」を策定した。
  ついては、関係事業者において本指針の趣旨が理解され、実効あるセーフティ・アセスメントが実施さ
れるよう適切な指導を行うとともに、労働安全衛生法第88条第4項に基づく計画の届出について審査を行
う際等にこれを活用されたい。
  なお、下記の関係各団体に対し、別添2(略)のとおり本指針の普及徹底を図るよう要請したので了知
されたい。

記
建設業労働災害防止協会
(社)全国建設業協会
(社)日本建設業団体連合会
(社)日本土木工業協会
(社)日本道路建設業協会
(社)日本鉄道建設業協会

(別添1)

山岳トンネル工事に係るセーフティ・アセスメン卜に関する指針

1  序文
    山岳トンネル工事においては、ガス爆発、坑内火災、異常出水等による重篤な災害や落盤等の頻発災
  害が発生する危険性があり、過去に発生したガス爆発事故や坑内火災事故では、施工計画の段階におけ
  る事前評価が不十分であったり、また施工中に必要な安全衛生対策が十分講じられなかったことが原因
  となって発生したと考えられるものが少なくない。
    このため、調査・設計段階、施工計画の段階等、施工開始前における安全衛生対策の充実を図ること
  が必要であるが、その手法の一つとしてセーフテイ・アセスメントの実施が挙げられる。
    本指針は、山岳トンネル工事に係るセーフティ・アセスメントについての基本的な考え方を明らかに
  するとともに、同工事を施工する事業者が施工計画の段階における事前評価を実施する上で必要な事項
  及び施工中における安全衝生の確保を図る上で参考となる事項を具体的に示したものである。
2  基本的な考え方
    山岳トンネル工事に係るセーフティ・アセスメントを行う意義は、施工計画の段階等において、その
  施工中における労働災害の危険性を事業者自らが評価し、事前にこれに対し必要となる対策をその質・
  量等の要素をも含めて検討することにより、施工中の安全性をより高めることにある。
    このようなことから、セーフティ・アセスメントは、以下の考え方により進めることが必要である。
  (1)  まず、安全性等を評価するための基礎資料の収集を十分に行う。
  (2)  次に、これらの資料から得られた情報を基に以下の手順により安全衛生対策の検討を行う。
      イ  山岳トンネル工事の施工における安全衛生を確保する上で必要不可欠ともいえる基本的事項に
        ついて適切な対策が講じられているか、又は講じられることになっているかを確認する。
      ロ  次に、当該山岳トンネル工事に特有な災害で、重篤な災害となる可能性の高いもの(以下「特
        有災害」という。)について、その施工中における発生の危険性を評価する。また、これらの危
        険性の評価については、これを定量化して、評価する。
      ハ  さらに、特有災害については、ロで評価を行った個々の災害に係る危険性の程度に見合った安
        全衛生対策を検討し、これが施工計画書に十分考慮されているかどうかを確認する。また、当該
        特有災害において、上記ロの危険性の評価の段階で、特に危険性が高いとの結論を得たものにつ
        いては、上記イの段階で検討した基本的事項の対策についても再度検討する。
  (3)  現場条件が確定しない等により工事着手前の施工計画段階では具体的対策を策定することが困難
      な事項については、工事の進捗に応じて得られたデータ等を活用しながら、その都度、事業者が自
      主的に評価を行う。
        なお、この指針は、以上の基本的な考え方に基づき、その手法、手順等を示しているが、セーフ
      ティ・アセスメントを行うに当たっては、特に、次の点に留意する必要がある。
      イ  基本的対策については、施工中の安全衛生を確保する観点から、必要な対策を網羅的に掲げて
        おり、その中には施工中において具体的に検討した上実行に移され得るような対策及び工事の条
        件によっては必要とされない対策も含まれている。
          したがって、これらのものについては、施工計画の作成段階で、いつ、どのように実行される
        か等について検討し、その時期に、施工中の安全衝生確保のための評価を行うこと。
          このように、基本的な対策として掲げられているものについては、単に施工計画の作成段階に
        とどまらず、施工中の安全衛生確保のためのチェックリストとしても十分活用し得るものである
        こと。
      ロ  特有災害の危険性の評価方法については、種々の方法が考えられるが、ここでは、過去の災害
        事例及び利用の簡便さを考慮し、地形、地質、施工延長、掘削断面及び坑口形式の5要素を用い、
        マクロな観点からの評価方法を考えることとしたこと。
      ハ  特有災害の危険度の度合いに見合った安全衛生対策の検討については、各特有災害ごとに検討
        項目を示し、その危険度のランク別安全衛生対策を例示したこと。
3  セーフティ・アセスメントの具体的手法
  (1)  適用範囲等
        この指針は、山岳トンネル工事(都市NATMを含み、地下大空洞を除く。)について適用し、工事
      を施工する事業者がセーフティ・アセスメントを実施するために用いることとする。
  (2)  事前評価の具体的進め方
        このアセスメントの評価の進め方は、次の4段階により行う。
        第1段階…基礎資料の収集
        第2段階…基本的事項に関する安全衛生対策の検討
        第3段階…特有災害の危険度のランク付け
        第4段階…特有災害の危険度に見合った安全衛生対策の検討
        各段階ごとの具体的進め方は、次のとおりである。
      イ  基礎資料の収集(第1段階)
          この段階では、山岳トンネル工事の安全性等を評価するために必要な基礎資料を収集し、整備
        を行う。この代表的な資料としては、以下のようなものがある。
        (イ)  地形図、地質図、環境調査書、気象調査書等の各種調査資料
        (ロ)  設計図等請負契約書に関する資料
        (ハ)  現場付近の工事及び類似山岳トンネル工事における工事記録
        (ニ)  山岳トンネル工事における災害情報
        (ホ)  労働安全衛生法等関係法令
        (ヘ)  各種安全基準等に係る技術上の指針
      ロ  基本的事項の安全衛生対策の検討(第2段階)
          この段階では、基本的事項について安全衛生対策が講じられているか、又は講じられることと
        なっているかを、別紙1「基本的事項に関する安全衛生対策評価表」の評価内容に記された観点
        からチェックし、必要があれば、施工計画を変更する等の措置を講じる。
      ハ  特有災害の危険度のランク付け(第3段階)
          この段階では、施工中の特有災害についての危険性を評価する。
          特有災害としては、以下の災害を取り上げる。
        (イ)  ガス爆発(可燃性天然ガス)
        (ロ)  坑内火災
        (ハ)  異常出水(坑内からの出水)
        (ニ)  異常出水(坑外からの流入)
        (ホ)  落盤等(落盤又は肌落ちをいう。)
          特有災害の危険性については、特有災害の種類に応じ、以下に示す各要素を考慮してI〜IVの
        ランク(坑内火災及び落盤等についてはI〜III)に分類する。ただし、特有災害によっては無関
        係となる要素もある。
        (ヘ)  地形
        (ト)  地質
        (チ)  施工延長
        (リ)  掘削断面
        (ヌ)  坑口形式
          なお、危険度のランク付けの方法は、別紙2「特有災害の危険度のランク付け」に示す。
      ニ  特有災害の危険度に見合った安全衛生対策の検討(第4段階)
          この段階では、前段階で評価を行った特有災害に関する危険性に対応する安全衛生対策を検討
        し、これが施工計画に考慮されているかを評価、検討する。
          なお、安全衛生対策の検討方法は、別紙3「特有災害の危険度に見合った安全衛生対策」に示
        す。
  (3)  事前評価後の措置
        事前評価の結果、是正を要する項目ついては、その実施時期、実施方法及びその確認方法等処理
      経過を明らかにする書面等を作成し、確実な実行を図る。
        なお、現場条件等が確立していないこと等により、具体的な計画を策定することが困難な項目に
      ついても、現場条件等が確立し次第、評価が行えるよう、事前評価後の措置に準じ、処理経過を明
      らかにする書面等を作成し、確実な実行を図ることが必要である。

別紙1  基本的事項に関する安全衛生対策評価表

1.施工管理体制  (表)
2.調査  (表)
3.掘削  (表)
4.ずり処理  (表)
5.坑内運搬設備  (表)
6.支保  (表)
7.覆工  (表)
8.工事用設備  (表)
9.作業環境  (表)
10.可燃性ガス対策  (表)
11.酸欠、有害ガス対策  (表)
12.坑内火災対策  (表)
13.緊急時連絡設備、避難通路等  (表)
14.救護体制  (表)
15.その他  (表)


別紙2  特有災害の危険度のランク付け

1.ガス爆発
    (表)
    (表)

2.坑内火災
    (表)
    (表)

3.異常出水(坑内からの出水)
    (表)
    (表)

4.異常出水(坑外からの流入)に関する危険性の評点:W(L+A+S)
    (表)
    (表)

5.落盤等
    (表)
    (表)


別紙3  特有災害の危険度に見合った安全衛生対策の検討

1.ガス爆発に関する安全対策  (表)
2.坑内火災に関する安全対策  (表)
3.異常出水(坑内からの出水)に関する安全対策  (表)
4.異常出水(坑外からの流入)に関する安全対策  (表)
5.落盤等に関する安全対策  (表)